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□ひとひら
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手を伸ばしても、触れられない。


どれだけ声を枯らしても、伝わらない。





それが、どんなに悔しくても
けして届きはしない。









ひとひら










ゆっくりと、その頬に手を伸ばした。


「……」


紙一枚隔てた距離で、躊躇うように指先は止まってしまう。




「…セフィロス」



なぞるように指を滑らせて。
その唇に、静かに近づけた。





「ごめん、な」






指先は、触れられない。






「守れなくて、ごめん」







覚悟を決めて。
ゆっくりと、その体を抱きしめた。
その瞬間。
ふわりと、溶けるようにふれた部分が消えていった。



「……ッ」




もう、抱き締めることさえ叶わない。








「もっと」



薄い緑色の世界が、淡い光を放って溶けていく。







「もっと、そばに居たかった」







じわりと、涙が溢れ出して。視界を覆った。






あぁ、やはり触れてはいけなかったのか。


滲む視界でぼんやりと、そんなことを思った。









「セフィロス」




届かない
悔しい
もどかしい
痛い






伝わればいいのに。











「…ッセフィロス…!!」







この思いの欠片でも、届けばいいのに。







end

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