恋なんて愛なんて。編

□波乱の幕開け
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「俺と志緒は例え恋人が出来たって結婚したって離れらんねーよ!」



だから別に構わないんだと、そう言う。

そんな事をサラリと言う花道に、言える花道に、嫉妬する。



未来なんて誰にも判らないのにそれでも、お前は決定事項の様に当たり前の事の様に言ってのけてしまうんだ。

そしてそれに根拠もなく納得出来てしまうから質が悪い。



だけど、それはとても羨ましくて嫉妬せずにはいられない事だけど
それでも違うんだ俺は。

俺が欲しいのはお前と志緒の様な揺るぎない絆じゃなくて。
志緒を求める権利とそれを包んでくれるだけの志緒の想い。


欲しいモノが決まっているのに他の事に嫉妬する俺はおかしいの。欲張りなの。




なぁ花道。
俺だってお前が好きなんだ大切なんだ。

そんなお前に嫉妬するのは実は辛いもんだったりもするんだだから。

だから花道、お前への分も併せて全部矛先をかえてしまうからだから、




なぁ教えて
「花道。…志緒の好きな奴って…誰?」



「アタシの…なに?」




突然背後から聞こえた声に弾かれた様に振り返る。

そこにはやはり予想通り志緒の姿があって。
煙草を取り出しながら俺達を見下ろしていた。




「おー志緒、えらく遅かったな。」

「どこ行ってたんだ?」

「部員全員に夏合宿のプリント配りにね。」

「合宿?!聞いてねーぞ俺っ!!!」

「ハイハイ、花道のはこれね。」




そう言って、花道に一枚のプリントを手渡しながら志緒は俺と花道の間に腰を降ろした。

ガサガサと朝買っておいたのだろうコンビニ袋から飲み物を取り出して、それにプシュリとストローを差し込む。

軽く煙草を吸った後、紫煙を吐き出さずにそのストローに口をつけた。
だから口が開いて出て来るのは、白い煙じゃなくて。




「で?アタシの何?」




真っ直ぐに瞳を向けられて、俺は言い淀んだ。
本人に聞くなんて度胸は生憎持ち合わせてないのだから。

その心中を悟ってくれたのか大楠が代わりに言ってくれる。
感謝するけど、それでも聞きたくないという気持ちはまだあった。

志緒の好きな奴を、志緒の声で聞くなんて。



やっぱり言わなくていい…そう声にしようとした時には、
既に志緒の口は開かれていた。



 
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