恋なんて愛なんて。編
□波乱の幕開け
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ありえねぇだろ。
そう言って俺は笑い飛ばしたんだ。
だけど花道お前がそう言うなら、きっと。
それは痛い程に判ってる。
判っていても、信じたくない。
それが本音なのだけど。
【波乱の幕開け】
「「「「志緒が恋ーーーーッツ!!??」」」」
「うむ。」
突然だった。本当に唐突に、花道は「どうやら志緒が恋をしたらしい」と、何処か嬉しそうに俺達にそう告げた。
だから俺達は昼休みの屋上で大声を上げた。
偉そうに腕を組んで頷く花道を余所に、俺達は顔を見合う。
その話を信じるか信じないかを確認しあう様に。
出た答えは「信じられない」だったのだけれど。
「いや…え?」
「なんで、つか」
「花道…お前それ何情報?」
「信じらんねぇつーか、ありえなくねぇか?」
「ふぬ!なんで俺様の話が信じらんねーんだよ!」
「じゃ、何を根拠にそんな事言ってんだよ。志緒が言ったのか?」
そう問えば、花道は少し考える様に視線を宙に浮かせて。
言ったっつーか言ってないっつーか…となんとも曖昧な言葉を呟いた。
「どっちだよ;」
「でもアレは恋してんだぞ絶対!変だったからな!!」
「はぁ?何が変だったんだよ?;」
「志緒がだ!」
「はぁあ?;」
花道の説明ではなかなか要点が掴めない。
つまりは、志緒が恋をしているから変だったと花道は言っているんだろうけど…
一体どんな風に変だったと言うのか。それは本当に恋なのか。
だいたい今朝見に行った朝練の時は、別に志緒が変だなんて思わなかった。
それは大楠や忠や高宮も同じらしくて。
「変、だったか?」
「いや別に。」
「つーか変ってどんなだよ?」
忠の言った言葉に自然と俺達の視線は花道に集まる。
花道はきょとりとした後、さも当然だとばかりに「変は変だろ。」と言ってのけた。
「いやだからどんな感じに変なんだよ!顔赤らめて物思いにふけってたとかか?」
「ぬ…志緒がそんなんしてたらなんかキショイぞ…;」
「まぁそれは俺も思うけどよ;」
想像したのか、顔を引きつらせながら大楠が言う。
俺はそんな志緒なんて想像すら出来なかった。
「…なんか違ったんだよな」
「なんか違った?」
「おー…今まで見た事なかったんだよ。あんな志緒。」
「「「…」」」
「…それがなんで恋だってわかんだ?」
「志緒が言ったんだよ。恋ってどんな感じだ?って。」
「ハハッ…なんだよそれ……ありえねぇだろ」
俺の笑いを含んだ声だけが、やけに響いて消えてった。