恋なんて愛なんて。編

□好きだからしました。文句は受け付けません
1ページ/4ページ





横も側も。近ければ近い程いいのはだって、なんだか心地良いから。

バスケと睡眠の邪魔さえしなければ、他の時間全部、くれてやってもいいと思うのはだって、嫌いじゃないものが均等になるから。
嫌いじゃないものばかりで埋め尽くされてくれるから。


だけど、だからこそ。
横にも側にもアンタが居ない時に。バスケの最中にアンタが頭に浮かんだ事に。

気付いた苛立ちはつまり。





【好きだからしました。文句は受け付けません】






その日の午後、突然なのかそうでないのか。
流川に変化が起こった。

シュート練習をすれば、いつも通り綺麗なレイアップを決め…着地に失敗してコケる。
ミニゲームをすれば、豪快なダンクで…オウンゴールを入れる。


流川のバスケへの情熱は、見ていれば誰だって気付ける程のもので。
だからこそ、こんな流川は有り得ないと誰もが思った。

流川自身もそう思っているのか、不可思議な失敗をする度に舌打ちが漏れ。
苛立ちだけが募っている様で…不機嫌なオーラを目一杯に放つ彼に、誰も軽々しく声をかけられない。
だから彼に何があったのかなんて、誰にも判らない。



「もうっ!一体なんだって言うのよっ!!」



ご機嫌取りなんてものはしないものの、みんながみんな、流川の機嫌を伺って。
舌打ちが聞こえる度に、八つ当たりでもされるんじゃないかとビクビク怯えるこの状況に、流石の彩子嬢も動かざるをえなくなった。



「流川!ちょっとこっちいらっしゃい!」

「…」



勇気あるその行動に、三井や他の大多数はおぉ…と羨望の眼差しを。
宮城や仙道、越野に牧なんかは、大丈夫なのかと彩子の身を案じ。
花道と清田は、流川なんてほっとけばいーのにと悪態付き。
…どうでもいい、と気にしてないのは、藤真を筆頭に少数。

たくさんの視線を浴びながら、流川は言われた通りに彩子嬢の方へと足を向けた。
我が道を行く彼の、数少ない歯向かえない人物なので致し方ない。



「…」

「一体なにがあったって言うのよ。アンタらしくないじゃない。」

「…」



何も答えずただイライラと手の中でボールを遊ばせる流川に、はぁ…とわざとらしく溜め息を吐いて。

確信にも近い事を、あえて疑問系で彩子は聞いた。



「志緒と何かあったの?」

「…」



ピクリと眉を動かして、彩子に視線を移す流川。
返事はなくともそれは肯定。
やっぱりねと彩子は肩をすくめた。

本人に自覚があるかは判らないが、失敗して舌打ちする度に、視線を志緒へと移していたのだ。
睨んでいる様な、顔色を伺う様な、不思議な表情で。



「話してみなさいよ」



どうせアンタ一人じゃ解決出来ないんだから…と暗に含ませての言葉に、流川は彩子を見て、視線を床へと落とす。
それは、話す事を迷っているんじゃなくて、どう話せばいいのかと考えての事。

この後輩が口下手な事は百も承知な彩子は、何も言わずにただ流川が話し出すのを待ってやった。



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ