恋なんて愛なんて。編

□僕のラブ1、エネミー5
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どうしよう、と思う。

どうしようなんて思ったってどうしようも無いのに、それでもだってどうしようとしか思い様がない。

じゃあ何がどうしようなのかと言えば、
見るつもりはなかったのに見てしまったモノと。聞いてしまったモノで。

それから、自分もどうしよう。





【僕のラブ1、エネミー5】





流川と木暮のいる部屋で、三井は本当にどうしようかと、お世辞にも良いとは言えない頭でうんうん考えていた。


だって自分は、ただ呼びに行っただけなのに。
なんであんなの見せられなくちゃ、聞かされなくちゃならないんだろう。

流川と志緒のキスシーンと、それから流川の告白なんて。
どう考えても、自分が見て聞いていい思いするモノじゃないのに。

ブラウン管の中の作り話しなら、そりゃあ面白がったり、真剣に見入ったりするけれど。
生だし。第一、好きな女だし。
それをどうやって面白がったりしろと言うのか。



見てしまったその触れ合いに、固まった体は動けなくて。だから聞こえてしまったのは仕方ない。

小さな声だったのに、やけに耳に響いた気がして。
その言葉を理解した瞬間、その場から逃げ出した足は、たぶん悪くない。

踏み入って、何してんだと言ってやるには、自分はあまりにも中途半端だったから。



でも逃げ出さなければ、その後何事もなかった様に広間に現れた二人を見て、こんなにも落ち着かなくなったりしなかっただろう。

あの、後。
自分が逃げ出した後に。一体何があったのかなんて。

聞きたいし、聞きたくないし。知りたいし、知りたくない。

あぁどうしよう。





まだ十時にも満たない時間。
なのに隣りの流川は、既に布団の中でグースカ夢の中。

お前の所為で俺はこんなに悶々してんのに、何幸せそうに寝ちゃってんのお前は。とチョークスリーパーでもかけてやりたいと三井は思う。


でも、自分はこんなに、どうしようも無いぐらいどうしようなのに、流川はグースカ寝てるって事は。
やっぱりそうなのかと、考えるのは当たり前。

自分なら、志緒にフラれたらきっと、悲しくって眠れやしない。

じゃあやっぱり、そうなのかよ、流川。






「あーー………」

「…なんだよ、気の抜けるような声出して;」

「木暮ぇ……どうしようか、俺。」

「そうだなー、って答えられると思ってるなら、お前の神経疑うぞ、俺は。説明をハブくなよ、説明を;」

「説明できたら苦労しねーよバカヤロー」

「じゃあ答えを求めるなよ…;」

「チッ…使えねーな…」

「悪かったな使えなくて;」



はぁー、と聞こえた重たい溜め息に、木暮は本当に一体どうしたんだと心配になった。

そんなに悩む程の事があったんだろうけど、でも説明は出来ないらしいし。
じゃあどうやって聞いてやればいいのか。



「三井……そんなに難しい事なのか?」

「あー?」

「説明なんて出来ないぐらい、難しいのか?」

「あー…簡単つったら簡単。難しいつったら難しい。だからややこしくて説明なんてできねー。」

「…そっか。でも俺が相談に乗れるような事なら聞くぞ?多少ややこしくても三井より頭はいいつもりだしな、ハハハ」

「おー。けど、やっぱいらね。…ホントは全部判ってんだ。」



冗談ぽく言って笑った木暮に、でも三井は冗談ぽくなんかなく答えて。
そのままゴロンと布団に倒れた。

だから木暮は「そっか」としか言えなくて。だけど心の中だけで、じゃあ頑張れよとエールを送った。
だって、三井が何を考えているかなんて、木暮には判らない。





ホントは全部判ってるんだ。

自分がこんなに、流川に負けた気分になる理由も。
自分が何をしたいのかも。

判ってるんだ。



 
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