恋なんて愛なんて。編
□波乱の幕開け
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志緒が?
あの志緒が恋ってどんな感じかなんて聞いたって?
ありえねぇよ。想像も出来ねぇよ。
だってそんなの、信じられない。
だけど判ってるんだ。
花道お前は嘘なんてそんな器用なものは吐けやしないって。
俺は判らなかったけどお前が志緒を「変」だと「違う」と言うなら、「見た事ない」なんて言うのならそれに間違いなんてない事も。
それでもなぁ花道。
俺は信じられないよ。
こんなに突然、何の前触れもなくそんな事になるなんて。
何時だってなんだって、まだ何も終わりはしてないのに勝手に何かは始まってしまうんだ。
そんなもんに着いて行ける訳がない。
だから信じられないよ信じないよ。
信じたくないよ。
悪足掻きだろうと現実逃避だろうと構いやしないから。
本当は全て納得してしまっているんだ。だって花道お前が言うのだから。
それでも、だからこそ。抗う事をどうか許して。
じゃないと俺は、堪えられそうにない。
「洋平…?お前もなんか変だぞ?」
「……まぁほっといてやれよ。…そんで?お前はなんて答えたんだ?」
「ぬ?あぁ俺は…」
妙に敏感な花道から忠が上手く逃がしてくれた。
気の利く奴で本当に頼もしいけれど。それでも俺の気持ちを悟らせてしまったのは痛かった。
今まで一言も告げず悟らせずで通して来たのにこんな所でボロを出してしまうなんて。
たぶん忠だけじゃなく大楠も高宮も気付いてしまっただろう。
そしてコイツ等はバカみてぇに世話焼きだからこれからきっとずっと俺を心配してくれてしまうんだ。
俺がそんな迷惑をかけたくなくて隠していた事を知っても。
あぁ本当にバカで心配性で世話焼きの集まりだなここは。
それが嬉しくて心地良い事に、違いなんてないのだけれど。
「つーかよ、不思議だよなー。」
「おう、不思議だ。」
「不思議だな。」
大楠、忠、高宮と続いたその言葉に、俺も胸の内だけで同意した。
花道だけが何の事か判らず、焼きそばパン頬張りながら首を傾げる。
「何がだ?」
「お前だよ。」
「ふぬ?」
「お前は晴子ちゃんが好きとは言えよ、志緒に好きな奴出来たかもなのにやけに嬉しそうじゃねーか。」
「もし志緒に恋人だの出来たら、今みてーにいっつもお前と一緒にいらんねーぞ?いーのかよ。」
そう聞けば、花道はなんだそれはとおかしそうに笑った。