恋なんて愛なんて。編
□好きだからしました。文句は受け付けません
2ページ/4ページ
事は、午後に入って最初の20分休憩の時。
流川は顔を洗おうと、体育館の脇にある水道へ向かって。でもそこは混雑していたから、少し離れた校庭脇の水道へ向かった。
丁度そこへ向かっていた志緒と晴子の背中を見つけて、近付こうかどうしようかちょっと迷ってみる。
流川がちょっと迷ってみてる間に、志緒と晴子は5段程度しかない、低い階段を下り始めていて。
『きゃ…!』
と小さな悲鳴が聞こえて見た先で、晴子が足を滑らした。
前のめりに倒れて行く晴子のその腰に、志緒が咄嗟に腕を回して。
でも片手はペットボトルが入ったカゴを持って塞がってたから、手摺を掴む事なんて出来なくて。
引いた晴子の身体を上に乗せたまま、尻から落ちた。
晴子とペットボトルの入ったカゴを死守した志緒は、落ちた際に腰を段差で擦って、足首も軽く捻ってしまったらしい。
流川はすぐに駆け寄って、志緒を横抱きで持ち上げた。
『志緒ちゃん!ごめんねっ私の所為で…っ!』
スタスタと体育館へ戻る流川の横に、無傷だった晴子が心配顔で並ぶ。
その晴子の言葉を聞いて、流川は苛立たしげに吐き捨てた。
『アンタが勝手にコケればよかったのに。』
言われて、晴子は泣きそうに顔を歪めた。
でも流川は関係ないとばかりに足を進めて。
志緒はそれに顔をしかめた。
『楓、降ろして。』
『…なんで』
『いーから。』
『イヤダ。』
『…降ろしなさい。』
キツイ目で睨まれて、流川は志緒を降ろした。
志緒は俯いたままの晴子を振り向いて、『晴子』と優しく声をかける。
その声と、さっきの声があまりにも違うから、流川は何も言えない。
『晴子、肩、貸して?』
『っ、うん』
言われて、晴子は情けなく笑って、二人は流川を置いて先に体育館へ戻っていった。
流川は何も言えなかった。
「…なるほどね。だからさっきあの子、足に湿布貼ってたのね。」
「…」
「あぁ、たいした事ないって。ちょっと腫れただけよ。」
流川の視線の意味をちゃんと汲み取って言った彩子に、流川はホッと息を吐く。
それに彩子は笑った。
「それで?」
「…?」
「アンタはあの子の怪我が気になって、バスケに集中出来なかったの?」
「…」
「それとも、なんであの子に睨まれたのか、判らない?」
「…それもある。」
「じゃあ他には何があるの?」
「………」
今まで、何度だってアイツの事は考えた事はあるけど、それはバスケと睡眠以外の時だけで。
なのに、睨まれた時のあのキツイ目が、頭から離れなくて。
バスケの邪魔するアイツが、
ムカつく。