暖かな日の光

□血痕のないからだ
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男の歩みが一歩で止まる。


目の前に散らばっている傘と鞄。

そして自分の数歩先には少女。

       からだ
血まみれの死体と違って

キレイな体。


胸は上下に動いている。


ほとんどの死体の顔には血がついていると言うのに、


白い陶器の様な顔には赤い赤い紅い血がついていない。


長いマツゲ。


半開きの唇。


男は伸ばしかけた手を危うく止めた。

もしかしたら相手は自分を殺しにきた暗殺者かもしれない。


周りに転がっている傘や鞄の中身を調べる。


危険物は無かった。

カミソリはあったが。


キレイな体を調べる。


「・・・。」


男は自分の意を殺して少女の体を調べた。



危険なものは無かった。

自分を殺しに来た暗殺者ではなかった。

では、何故このような少女が此処にいるのか。


男は火の消えた煙草を、少女より遠くに落とし、もう一本煙草を取り出して火をつけた。


煙は空へとなびいていく。


では何故このような少女が此処にいるのか。

暗殺者ばかりいたこの国に。



「・・・・・・・・・・・・。」



男は考えを少し巡らせた後、


「よっこらっせ、と。」



少女を肩に担いで持って帰る事にした。



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