頂き物
□ある冬の寒い日に
2ページ/5ページ
先を急ごうと歩幅を広げた新八は、ちょうど表面が凍っている部分に片足を着地し、派手に滑って尻餅をついた。
「いった〜…って、あ!卵!!」
慌てて右手に持っていた買い物袋の中身を確認する新八。
尾骨を走る鈍い痛みよりも、先程購入した卵のパックを心配する辺り、『どこまで家庭的なんだァァ君は!!』とどっかのゴリラから聞こえてきそうなものだ。
「よかった、無事だ…」
卵の無事を確認した新八はほっと胸をなで下ろす。
今月も家計はギリギリなのだ、貴重な食料を無駄にする訳にはいかない。
「おいおい、大丈夫か〜新八」
銀時が屈んで買い物袋を持っていない方の腕を伸ばす。
「あ…はい、すいません…」
急に恥ずかしくなりつつも、差し出された手を掴むと、それは予想以上にひんやりと冷えていて。
「うわっ、冷たっ」
「お前もな。…よっ、と」
「わわっ!!」
足元が滑る上に強い力で引っ張られたため、引かれる勢いのまま新八はぽすっ、と銀時の腕の中に収まった。
「ご、ごめんなさ…」
慌てて離れようとした新八だったが、しかし銀時の力強い腕によってそれは叶わなかった。
.