その他
□名探偵コナン
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大きめの眼鏡をかけて髪をひとつに結い、可愛い帽を被る。すっきりとしたパンツスタイルで足早に事務所を出て、町を歩いた。
まったく、とんだ災難だ…。
この間の警察署人質事件があって、マスコミに騒がれてしまった。
いくら口止めをしたって、もれるものはもれる。
おかげで海外の両親からも連絡がきて、パパに心配された。無事ならいいってママは笑ってた。
蘭ちゃんと園子ちゃんには怒られて、昴さんはいつも通りだったけど雰囲気が怖かった。今度護身術?を教えてくれるって。…引き込もりの理系大学院生が…?
《MATURIさん!警察署での仕事で殺人犯に人質にとられたそうですね?怪我は?詳細は?》
《警察官は一体何を?犯人は拳銃を持っていたそうじゃないですか》
みんな同じことばかり聞いてくるから、ここ数日わりと疲労感を感じていた。
暫く仕事は抑えてもいいか事務所に言ったら、別にスキャンダルじゃないから、構わないでいい、って一刀両断。
清子さんは各所への連絡やら謝罪やらで忙しくしている。ごめんね。でも彼女、何故か生き生きしてたような。
「……あれ?」
いつも行列のできるシュークリーム屋さんの行列に、見知った姿が見えた。
背中を曲げて挙動不審に周りを見ている。
…動揺しすぎじゃないだろうか…。
「高木刑事?」
「へ?」
こんな所でどうしたの?
「茉莉さん…!?」
「メガネ似合わないねー!」
「う!いや、まあ…ハハハ…」
私服だからプライベートだろう。
頭の後ろに手をあてて誤魔化すように笑う彼。だて眼鏡する必要ある?
どうやら、彼は警視庁で缶詰めになっている先輩方にシュークリームの差し入れを買いにきたみたい。中には佐藤さんもいるようだ。だからこの店のシュークリームをチョイスした、と。
でもいざ並んだら、女性ばっかりで場違いな雰囲気に負けそうになり、挙動不審になったらしい。
「へえ…」
「君こそどうしたんだい?今日は学校じゃないの?」
「2、3日は休学なの。騒ぎがあったでしょう?学校がバレて人が来てて…」
「あー…」
から笑いしながら何故か高木刑事が申し訳なさそうにする。
たぶん、想像だけど。警視庁が忙しいのも私の件が公になったからだな。ごめんなさい。
「だから私は暇なの。高木刑事、シュークリーム並ぶの付き合うから、私のも奢って!」
「…ハァ。仕方ないなあ」
一人で並ぶのが限界だったのか、ほっとしたように笑って許してくれた!ちょろいぞ!高木刑事!
「ねーねー佐藤刑事とはどうなの?」
「どォ!?いや、なんで…?!」
「高木刑事ってウソ言えない人だね…」
思わず目線を遠くに飛ばす。でもそんな表裏のない人柄が皆に好かれるのかな?
「私まだ恋とかわからないし…佐藤刑事も高木刑事のこと好きってオーラ見ててわかるし、二人ともイイナーって」
「そ、そう思うかい?!佐藤さん僕の事好きってオーラある!?」
「うん、あるある。付き合っててその自信のなさは何なのぉ?」
「や、佐藤さん、サバサバしてて、その、あんまり言葉に出す人じゃないし…人気もあって僕なんかが本当に…」
暗っ!?
なんでそんなに後ろ向きなの?!
「あ。順番」
「ハッ!か、買ってくるよ。シュークリーム一つでいいかい?」
「うん!ありがとう」
高木刑事に奢って貰ったシュークリームは絶品だった!
女性の群れから解放された彼は、表情も晴れやかで。大量のシュークリームを片手に笑顔だ。
「茉莉ちゃん、本当に助かったよ!もう少しで買うの諦める所だったから」
「どういたしまして」
じゃ!今度は私の番ね。
高木刑事の車にシュークリームを収用して。しっかり保冷剤が効いてるのを確認してから彼の腕をとった。
「今日は非番とみた!少しでいいから私とデートして!!」
「ハイィ!?!」
なんだかんだで、嫌な顔せず付き合ってくれた高木刑事。
ゲームセンターでカーレースして、ゾンビを撃ってプリクラ撮って、UFOキャッチャーで大きな猫のぬいぐるみをゲットした。かなり課金した。もちろん高木刑事が。
「あー楽しかったぁー!」
「気分転換になったようで良かったよ。さあ、送っていくからもう帰ろう」
「…うん」
記念に撮ったプリクラを手帳に挟み、素直に高木刑事の後に続く。
彼は私がストレスでこんな事をしてるのが分かって、困った顔してても最後まで付き合ってくれた。
「高木刑事、女子高生と密会…お巡りさんにバレたら逮捕されちゃうかもね」
「ヒェェ!!?」
あ。高木刑事もお巡りさんか。
このリアクション、面白くて飽きない。
「私、佐藤刑事に用事あるの思い出したから、一緒に警視庁行ってもいい?」
「しょうがないなぁ…」