その他
□名探偵コナン
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喫茶ポアロ
AM 12:30
カラン
来店を知らせるベルが鳴って、帝丹高校の制服を来た少女達が楽しげに足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ!4名様ですか?」
「はい!今混んでますか?」
「空いてますよ!奥の席にどうぞ」
時間的に混んでいると思っていたが、タイミングが良かったのか席は1つ空いていた。
店員さんに案内されて、4人がけのソファー席に座る。
奥の二人は何度か来たことがあって、メニューを手に取りこれが美味しかった、等を教えてくれる。
「どれにしようかなぁ」
「ケーキは外せないわ!」
「ね」
結局、茉莉はトマトのスープパスタを選んで、デザートにケーキを注文した。
シチューも捨てがたかったが、煮込み系の料理はよく食べるので止めた。
「やっと茉莉と麗子を連れてこれた!二人とも捕まらないんだもん」
「私は部活があるし、茉莉も仕事があるからねー」
「あ!あの人!言ってたイケメン!」
友人がアイコンタクトでその人を教えてくれる。
その人を目当てに客が殺到するらしいって聞いて興味で来てみたけど。
色黒で明るい髪色、背は高くてエプロンが似合う。笑顔も爽やか。見た感じでは物腰も柔らかくて優し気だ。
「へぇ…」
「反応うっす」
「だから言ったじゃん。茉莉には無意味だって」
麗子がため息をつきながらそう言うと、目の前の友人、優子と加奈子が悔しそうに足を鳴らした。こら、静かに待ってて。
「安室さんは別格だもん!」
「いくら茉莉でも、共感してくれるって思ったのォ」
「お待たせしました。ミルクティー4
つです」
何処かで聞いたような声…?
優子と加奈子の顔がトマトみたいに赤くなってる。
お礼を言ってミルクティーを受け取り、熱いので気をつけて、的なセリフに頷いた。
うん、知らないな。気のせい気のせい。
「あの後、大丈夫でした?」
「え?」
友人二人が驚愕の顔で私と彼を見ている。
麗子はおしぼりで手を拭っており、此方の事には興味ない様子。うん、そんな麗子が大好き。
「…あのぉー何処かでお会いした事ありました?」
「おや、残念。忘れられてしまいましたか…。貴女とは以前、レストランでの結婚祝いの事件でウェイターとしてお会いした事があるんですが…」
「レストラン、事件…ウェイター?」
前に小五郎おじさんと行った結婚祝いの時の…?事件については後味が悪かったのもあってよく覚えている。
あの事件だとしたら、ドジしてたウェイターのお兄さんかなあ?
「…お盆落としてたウェイターのお兄さん?」
「ハハ。そこで覚えられてましたか。そうです、そのウェイターです。実はもう一度貴女にお会いしたかったんです。お元気そうで安心しました」
「あの時は、ご心配をおかけしたみたいですみません…」
「そんなこと。改めて言わせてください。僕は安室透、探偵をしています。ここの上にある毛利探偵事務所の毛利先生の弟子で、ポアロのアルバイターもしています」
「はぁ…」
…まって。
小五郎おじさんの弟子?それ何処かで聞いたぞ…。
思い出した!新ちゃんからの電話だ!
小五郎おじさんの弟子ってことは新ちゃんの弟子?!いや、どうなのそれって!新ちゃん、色々バレるんじゃないの?!
「宜しければお名前を教えて下さいますか?」
これからは毛利先生の依頼について行くので、お会いする機会もあるでしょうし。…って…
私が新ちゃんに近づかなけりゃ会うこともないんじゃ…。
言え、と友人二人の目が言っている。麗子はミルクティーに夢中だ。美味しそう。
「…工藤茉莉といいます。蘭ちゃんとは幼馴染みで、居候してる江戸川コナンくんとは親戚なんです」
「それであの日もご一緒にいらしてたんですね。茉莉さんとお呼びしても?」
「え?あ、はい」
机の下で麗子にツンツンされる。え?なに?
良く周りをみたら、他のお客のお姉さま方や奥様方、同じJKの皆さんから視線を感じた。こわい。
優子と加奈子は安室さんを見たまま固まっていた。
「あー…私、スープパスタが早くたべたいなぁ…お腹空いちゃったなぁ。安室さん、まだですか?」
「フフ。直ぐにお持ちしますよ」
そう言って彼はカウンターの奥に戻っていった。やれやれ…。
なんなの?女子高生に絡んでないで仕事して?アルバイター!
「こわ…何あれ…ちょー怖い。話してただけであの視線…」
「優子達が言った通りね。彼、凄い人気みたい」
「…茉莉、安室さんと知り合いだったの?」
「安室さんから名前を聞くなんて初めて見た…」
彼と会ったのは事件だよ。知り合い未満他人以上だよ。
そんな事で弁解してたら、本当にすぐに頼んだランチが来た。持ってきてくれたのは安室さんじゃなくて、綺麗なお姉さん。良かったぁ。
「安室さん特性のスープパスタと、シチューと、オムライスです。美味しいですよー」
お姉さん、その情報いる?
「美味しい…」
「でしょ?イケメンで優しくて料理できるとかヤバくない!?」
「うん。やばいやばい」
聞いてないわね!
って可愛くプリプリしてる優子。
私と麗子は黙々とパスタを味わった。うん、まじで美味しいわぁ。
「ねぇ、安室さん茉莉のこと気にしてない?なんかチラチラみてる気がする」
「店内のお客に気を配るのが仕事じゃん?」
「えーそれだけぇー?」
安室さん規格外にカッコいいけど、茉莉も負けてないよぉ。
帝丹高校女子人気投票もさぁ…
なに?人気投票って
男子たちの中では更に裏人気投票ってのもあるって聞いたわ。
加奈子はお兄さんいるもんねー。
なんて。女子高生らしく盛り上がっていたら、食後のケーキが届いた。
「特性ショートケーキです」
「ありがとうございます!」
美味しそうなケーキ。皆でお礼を言って食べようとしたら、また彼がニコニコと絡んできた。
…そんなに暇なの?!
「ところで君たち、帝丹高校の生徒さんだよね?今日は学校は?」
「私たち一年生なので、中間テストが終わって早帰りなんです!先輩たちは模試があるからまだ学校なんですけど」
「そうなんですか。では蘭さんも園子さんも今頃は学校でお昼なんですね」
「毛利先輩と鈴木先輩のことですよね?先輩達、常連なんですか?」
「まあ、そうですね。蘭さんはここの上がお家ですし、一緒に園子さんもよく来てくれますよ」
「へぇー」
優子達も私に巻き込まれて蘭ちゃんや園子ちゃんと一緒にご飯を食べた事がある。
安室さんは私経由の知り合いだろうって特に突っ込んではこないみたいだけど。
ここにいない先輩の話をしてるのが違和感よね。
「ケーキ、どうですか?」
「…美味しいです」
「よかった。また食べに来て下さいね」
優子と加奈子、二人と楽しそうに会話しながら、黙って食べてる私と麗子にもちゃんと声をかけてくる。
コミュ力神か。
「ねぇ、やっぱり安室さん…茉莉が気になってるんじゃないかなぁ。だって普段はこんなに話しかけて来ないよ?」
「…えー?」
ない。ない。
「それか実はMATURIのファンかも!」
もっとないよね?
私が載る雑誌って女子向けだし。
「安室さんレベルでダメって、どんな男捕まえる気なのよぉー」
「ハリウッドとか?」
「茉莉ならあるかもォ」
「…茉莉はどんな人がタイプなの?この前から彼氏欲しいって言ってるじゃない」
麗子が優子と加奈子を呆れた目で見ながら聞いてくる。
そうだなあー
「優しくてー」
「うん」
「面白くてー」
「うんうん」
「私を飽きさせない男、かなぁ」
「きゃ〰️!言ってみたぁ〰️い!!」
アハハって優子達が笑ってくれて、私も一緒に笑う。麗子はジト目だったけど。…麗子、その目…コナンくんに近いものを感じるよ…?
冗談だからね?
今のはママが言ってたやつだから。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだね」
「私これからバイト〰️」
お会計をお願いして、席を立つ。
皆それぞれ支払っていたら、例の男がレシートと一緒に名刺をくれた。
「…よかったら連絡下さい。裏に番号とアドレスを書いたので」
もちろんプライベート用の、ですから。
…って…うわぁぁ。
やっぱり皆の言う通りちょっかいかけられてる?
「…安室さん、私と遊びたいの?」
「…フフ。変な意味ではありませんよ。でも…」
飽きない男ならいいんですよね?
「…うぇぇ…聞いてたの?…あー…じゃ、私はこれで。ごちそうさまでした」
小さくお辞儀をして、店を出た。
三十六計逃げるに如かず!
皆は先に出てたから、会話は聞こえてなかったみたいだ。
「何か言われたの?」
「また来てねって」
「そう」
新ちゃんの言ってた通り、面倒なことになりそう…。
今日の電話で聞いて貰おう…。
「あれ?安室さんどうしたんですか?」
「…え?いえ、なんでも…」
「でも今固まってませんでした?」
レジの前でぼうっと立つ自分に梓さんが心配そうに声をかけてくれる。
体調が悪い訳ではないと伝えると、安心したように食器の片付けをはじめている。
「…ハァ…」
驚いた。
彼女の友達が先に会計を済ませて店の外へ出るのを見かけて、タイミングの良さに声をかけてみた。
『安室さん、私と遊びたいの?』
ほんの僅かに傾いた首。あざとさを感じない、男としての自分が自然と引き付けられる表情。
身長差があるから、そのまま目が合うとなんとも破壊力がある。
あれは、自分の感情の表出が自在な人間の表情と声だ。
あの時と同じ…。
逆に翻弄させられたのか?
「毛利先生の周りは本当に面白い…」
喫茶 ポアロで!
2018.06.17