鋼 の 錬 金 術 師

□恋心
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恋心 前編


エドワードはなにやら慎重な面持ちで東方司令部の玄関に立っていた。



中に入ると丁度、休憩時間になったのか司令部の中は騒がしかった。
「お、よう!大将、何時着いたんだ?」
そこに書類を抱えたハボック少尉が後ろから声をかけてきた。
「!あ…、ひさしぶり、少尉」
声をかけられた瞬間、エドワードは身体をビクッとさせたが、それは一瞬の事ですぐさま何でもなかったかの如く、微笑んだ。
「おう、久しぶり!……どうかしたのか?」
先程の一瞬にあったエドワードの動揺が、気になったらしい。
「・・・何にも無いけど?」
「そうか・・・ならいい」
エドワードは少尉が司令室に戻るというので付いていく事にした。


―・・・何も着いたらすぐじゃなくてもいいんだよな?―


ちょっと心の準備が出来ていなかったので、寄り道をする事にしたのである。



「あら、エドワード君」
司令室の扉を開けると、丁度休憩に入った所だったのか、メンバー全員が雑談する者やくつろいでいる者が殆どだった。
「こんちわ、中尉」
「はい、こんにちは。お久しぶりね」
ホークアイ中尉はにっこりと、いつもは見せない笑みを浮かべた。
その様子に見とれているものがいたが、エドワードにはどうして見とれるのかが解らなかった。
それもそうである。
中尉の微笑みはエルリック兄弟とか一部の者しか拝見できないのだ。
来る度にその微笑をもらっているエドワードには解らなくて当然なのだった。

「お茶、入れてくるわね」
そう言うと中尉は給湯室へ行ってしまった。
なんだか落ち着かなくてそわそわする。
原因はわかっているのだが、落ち着かせる術を知らなかった。
「ん?どうした、大将、トイレか?」
我慢しているように見えたのだろうか。
少尉がそわそわしていたエドワードに言った。
「んー・・・・・そうじゃねぇ」
と言いつつもまだそわそわしているエドワードにそこにいる者全員の視線が集まった。
っと、そこに中尉が戻ってきた。
「待たせちゃったわね、どうぞ」
「いただきます」
中尉の入れてきた紅茶はとてもよい香りがして、ちょっと緊張していたのが和らいでいった。
「カモミールティといってね、気分が落ち着くのよ」
え?っとした顔で中尉を見ると、
「なんだか緊張しているように見えたから、丁度いいかと思って」
にっこりと微笑まれた。
何も言わなくても中尉はわかっているかのように気遣ってくれる。
「・・・・ありがと」
ちょっと困ったような、でも嬉しいと解る顔で微笑んだ。




そろそろ大佐にも休憩してもらおうと思っていた所だったらしく、中尉からコーヒーを持たされてしまった。
昨日から泊り込みで書類と格闘しているらしい。
―・・・・そんなに溜め込むからだ―
その話を聞いたとき即答してしまった言葉だ。
皆、苦笑いしていた。
―そうなのよ。・・・その気になればあっという間に片付くという量なのに、何日もほおっておくから・・・―
これは中尉の言葉である。
まあ、朝食を摘んだ後、休憩無しで仕事していたらしいので、そろそろ休憩には丁度いいだろうとの事だった。
先ほどの中尉の気遣いで少し落ち着いたエドワードは、大佐用のコーヒーの乗ったトレイを片手に持ち、執務室の扉を叩いた。


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