鋼 の 錬 金 術 師

□小さな幸せ
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ロイ・マスタング大佐はその日、残業をしていた。

時計が午後10時を回ったところだろうか。
いつもなら当に明かりの消えている部屋から明かりがもれていた。
「まったく・・・・なんでこんな遅くまで残業しなければいけないのかね・・・・」
「大佐が仕事を処理なさらないからだと思いますが?」
すぱーんと即座にホークアイ中尉からの突込みが入る。
「大体、昼間サボらずにきちんと仕事をなさっていればこんなに遅くなることもなかったはずですよ?」
氷の微笑とでも言うのだろうか。
ロイはその笑みを見てピキーンと固まった。
「期限は明日の午前中までなので、急いで処理してくださいね」
「ああ、わかっている。今日中に何とか仕上げるよ」
「では私は仮眠をとってきますので」
「すまないね、昨夜も夜勤だったのに」
中尉は2日続けての徹夜になるのだろう。(本来なら午前中で上がりのはずが1日延びた)
「気になさらないでください。まだ半分しか終わってないので、こうなるのはわかってましたから。では失礼します」
そう言うと、中尉は執務室を出て行った。
と、入れ替わりにノックがしてハボック少尉が書類を片手に入ってきた。
「追加書類です」
「返事を待たずに入ってきたらノックの意味はないと思うのだが?」
「あ〜、たしかに」
だが少尉は悪びれもせず、頭をぽりぽりとかくと飄々と書類を差し出してきた。
「こちらが追加書類です。後は俺の分と中尉の分だけなんでソレが終わったら仮眠でも取ってください」
「私はまだ大丈夫だが?」
しれっと返すと少尉が溜息を吐いた。
「アンタ、自分の顔がどんなんかわかってます?」
「?なにがだ??」
「1週間くらい寝てないって顔、してますよ?」
「・・・・・ちゃんと寝ていたが」
「一度鏡で確かめられた方が良いっすよ・・・・」
呆れたと言う顔で、少尉は書類を置くと部屋を出て行った。
「・・・・・そんなに顔に出てしまっていたか」
ぽつりと呟かれた言葉は静かになった部屋に響いた。

実はロイはここ1週間、ろくに睡眠をとっていなかった。
業務を終えると、すぐに家に帰り食事もほとんどせずに査定の準備をしていたのである。
あまりに熱中するあまり、気が付いたら空が明るくなっていた・・・と言うのがほとんどで、そのままシャワーを
浴び、身支度を整えて朝はコーヒー1杯のみと言うのを続けていたのである。
おかげで査定用の書類はほんとに1週間で作ったのか?と言うほどの出来に仕上がったのだが、疲労の方は
完璧に押し寄せていたのである。
そんなこんなで、今までやっていた書類も処理し終わったので、追加できた物だけを残しお言葉に甘えて仮眠を
取りに、仮眠室へむかった。

仮眠室へ向かう途中、中尉にあったので、仮眠を取る事を伝え、その場を去った。




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