鋼 の 錬 金 術 師

□2006年 年賀フリーSS『隻眼の錬金術師』
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「………え?」

エドワードはいきなりの事に、びっくりして後退りした。









―隻眼の錬金術師―








数時間前…東方司令部。



ロイ・マスタングは立て込んでいた仕事を3日間かけて処理していた。

あと少しで片付くというところで、ドアをノックする音が響いた。

追加書類が来たのかとげんなりとした顔を隠さず、入室を許した。

「失礼します、大佐」

「追加ならそこに置いておいてくれ」

ロイは顔を上げずに書類を処理していた。

「書類はそこにあるものだけです」

顔を上げるとホークアイ中尉が厳しい顔をして立っていた。

その手には一枚の紙が握られている。

いつも冷静な彼女のそんな姿に、ただならぬものを感じた。

「どうしたんだね?」

「イーストシティをねじろにしている麻薬組織の動向を探っていた部隊からの連絡が途絶えました」

「……現状は?」

ロイの眉間に深い皺が刻まれる。

連絡が途絶えたということは消された可能性が高い。

人質として捕まったのなら何かしらの連絡あるはずだ。

「最後の連絡で気になる言葉が出てきたらしいです」




「『鋼の錬金術師を使おう』と」





ロイは勢いをつけて立ち上がった。

「その通信のすぐ後、無線が繋がらなくなりました」

「何時の話だ?」

「3時間前の通信です」

2時間以上連絡が取れないということは最悪の事態を覚悟しなければならない。

「……緊急体勢をしけ。エルリック兄弟の居場所を確認しろ」

「Yes Sir!」

執務室から司令室へ移動するとロイは驚愕する情報を聞くことになる。

「……! 大佐!彼らを昼間、イーストシティ駅で目撃したとの情報が」

「なんだと!?」







・・・・・数分前のイーストシティ駅前・・・・・



「ふぁぁぁ〜っ、やっと着いたぜ」

大きく背中を伸ばしながら、エドワードは欠伸をした。

「兄さんったら、列車の中で眠っていただけじゃない」

アルフォンスはそんな兄を見ながら呆れたように呟いた。

「しょうがねぇだろ〜眠かったんだから」

「・・・・・・・・・・・・」

アルフォンスがふーっとため息を着くのがわかった。

と、そのとき前をふさぐように立ちふさがる男がいた。

「エドワード・エルリック・・・・・鋼の錬金術師殿だね?」

その紳士(?)は、胡散臭い笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「・・・・・・相手に聞く前にそっちから名乗るのが礼儀じゃないのか?」

「それは失礼・・・・・もっとも覚えている暇などないと思うのだがね」

エドワードは、はっと周りを見ると黒づくめの男たちに囲まれていた。

「・・・・・・兄さん」

「・・・・・・・・・・・・俺に何のようだ?」

目に前にいる紳士は、さらに胡散臭そうに笑っている。

「私はランバート・ロリック。・・・・・・しがない科学者だよ」

「で、そのロリックとやらの用件は?」

早くこの場から立ち去りたい。そんな雰囲気を出しながら、エドワードは呟いた。


「君に・・・いや、君たちに手伝ってもらいたい事があるのだよ」


勝てないわけじゃない、取り囲んでいる相手は訓練されたボディーガードだが錬金術が使えるわけではないのでまだこちらに分があるといえるだろう。

だが、エドワードは目の前の胡散臭い紳士に警戒を解けずにいた。

紳士の目は、普通の者とは違う鈍った輝きをしていたからだ。

やばい、と本能が警笛を鳴らしている。

しかし、蛇ににらまれた蛙の如し、動けずにいた。

アルフォンスも同様である。

「私の屋敷で詳しい事を話そう。・・・・・・・車を」

紳士がそばにいた男に声をかけると1台の車が横付けされた。

半ば強引に押し入れられるようにエルリック兄弟は車に乗り込んだ。





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