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□逃げられない!
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その日はいつもより乗客が多くて2駅目で満員になってた。
 
ドアの近くだったが、学園のある最寄り駅までは反対側のドアしか
開かないから、いつも定位置はそこなんだ。
 
いつも通りに手すりに捕まり、外の景色を見ていたら
ふとした違和感に気がついたんだ。
 
最初は混んでいるからただ当たっているだけだろうと思っていた。
 
その位で目くじらを立てるほどではないし、揺れる車内じゃ
不安定なので当たることもある。
 
カーブとかだと支えきれないしな。
 
現にそれは背中にスッと当たっただけだった様だし、気にしていなかった。
 
次の日、また同じ様に体に触れる感じがした。
 
今度は明らかに触られているのが解るほどだった。
 
男の体を触って何が楽しいとか、なんなんだとか思いつつ、
その触ってきた手を掴もうとしたら、反対側のドアが開いた瞬間
その手は、逃げるかのように離れていた。
 
一寸の差で痴漢を捕まえ損ねた訳だが、こちらが気がついた事に
気づいたらしかったので、もうしてこないだろうと思っていた。
 
現行犯でも男が男に痴漢されたとか恥ずかしいと言うか情けないと言うか…。
 
何もそんな事せんでも…、とは思う。
 
まあ、今度来たらただじゃおかない!と決めて、その日はそのまま学園へ向かった。
 
それから一月が経って、その事を忘れかけてたんだ。
 
一月前と同じ状況が揃っていたなんて、気づきもしなかったさ。
 
 
 
スッと背中をゆっくりと撫でる感触に、ゾクッと悪寒のようなものが背中を走る。
 
出そうになった悲鳴に、思わず手で口を塞ぎ、音にするのを防いだ。
 
ビクリと震える身体に、後ろから撫で上げる手は気を良くした様に、
そのまま脇腹へと移動した。
 
構えていればそれほど反応はしないが、いきなりの事に驚いている身体は言うことを聞かず、
ビクンと震える。
 
脇腹を撫でる感触に、口元を手で覆いつつ振り返ると、そこには見知った姿があり、
驚きのあまり、覆っていた手を外して声を出してしまった。
 
「! ラ、ライト!?」
 
同じ特別クラスのクラス委員長で席も隣のライトの姿がそこにあった。
 
 
 
 
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