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□逃げられない!
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「おはよう。フリオニール」
 
返された返事は、その場の雰囲気に合わない、普通の挨拶だった。
 
 
何でライトがここに!?  
って、いうか、俺、今まで痴漢…、ってまだ触られてるぅぅぅ!!
 
 
視線を腰からライトへを何度も繰り返し、そこを触っている手から
伸びる腕は、紛れもなくライトのものだった。
 
顔を真っ赤にしてライトを見上げるその表情は、
恥辱からか瞳が潤み、挑発しているかのような艶やかさがある。
 
いつもと同じ涼しげな瞳で、フリオニールの視線を見つめ返すライトが、
フッと笑った。
 
潤んだ瞳で睨み付けていたフリオニールはその笑みの妖艶さに、
いつものライトとは違う色かを感じ、ゴクリと喉を鳴らした。
 
カーブに差し掛かったため車内全体が傾いたその時、
ライトとの距離がつまる。
 
先程より密着した状態で撫で上げる手をそのままに、
片手で逃げ道を塞ぐかのごとく扉に手をついているライトの体温が、
背中越しに感じられ、首だけを振り向かせていたフリオニールは、
赤い顔のまま前に視線を戻した。
 
俯いているので、真後ろにいるライトには表情が分からないが、
耳が赤くなっていることと、トンネルに差し掛かった際にドアの
窓ガラスに写し出されたフリオニールの顔は、羞恥に耐える表情で、
ライトの情欲を煽った。
 
腰から尻にかけて撫でていた手は、徐々に前の方へと移動する。
 
それに気がついたフリオニールは、驚いた表情で窓ガラスに写っている
ライトの顔を確認した。
 
とてもその様なことをしているとは見せない涼しげな表情で、
しかし熱のこもった視線が、フリオニールの視線と合わさった。
 
その瞬間に走った甘い感覚に腰が砕けそうになるも、
太股に達した手に、我に返った。
 
「ラ、ライトッ」
 
密着しているライトの耳にしか聞こえない音量の声で、
フリオニールはライトに話しかけた。
 
「どうした? フリオニール」
 
囁くように耳元で心配そうに語りかけてくるも、蠢く手を止めようとは
しないライトに、フリオニールは身を縮めると、ふるふると震えながら
肩越しにライトを見上げた。
 
その表情は、頬を染め、潤んだ瞳には生理的な涙を浮かべているため、
はたから見ると具合の悪い友人を介抱している様にも見えるだろう。
 
しかしライトの瞳にはどう贔屓目に見ても誘っているようにしか見えない。
 
「…君は、」
 
「?」
 
「誘っているのか?」
 
「!?」
 
焦がれるようなライトの視線に、ピシリと固まったフリオニールは
先程も感じた甘い痺れのようなものが、背中を走るのを感じた。
 
 
 
 
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