D F F

□小話集
4ページ/4ページ


 
 
 
 
■鰻
 
 
混沌の果てに程近い、今晩の野営地にて。
 
 
今日の野営地に選んだ森は、カオスの力が強いこの地域でも珍しく、
緑豊かな森と涼しげな小川が流れている。
 
少し離れた場所に滝でもあるのか、水が打ち付けられる音が辺りに響いていた。
 
水場に困らないここは、今の世界にとって数少ない場所だ。
 
野営の準備が終わると、元気の固まりな少年組と
もう少し落ち着いてくれと思わんばかりの青年が、一目散に
川へと駈けていった。
 
大きな岩場もあるらしく、オニオンとクラウドにガードされたティナが、
少し離れた岩に囲まれている場所へと着替えを持っていくのが見える。
 
今日の夕食当番であるフリオニールは、川と言えば…と、
何かを考えているようだった。
 
 
 
「フリオニール」
 
「お。バッツ、水はどうだった?」
 
革袋でできた水入れにたっぷりと汲んできたものを
炊事場の桶に乗せたバッツに聞いた。
 
「流れがあるからか少し冷たかったけど、この気温なら大丈夫だろ。
 あと、今晩の夕食、捕まえてきたぜ」
 
そう言うと、水入れとは別に持っていた底がザルになっている網で
作られた入れ物を渡してきた。
 
縛り口を解いて中を見てみると、八ツ目鰻がうじゃうじゃと入っている。
 
これは一匹ならばそんなに怖くはないが、肉食で特に家畜などの血が大好物という、
群れで襲われたら人たまりもないものだ。
 
「よくこんなに捕れたな」
 
「丁度俺たちが水浴びしていたとこの下流に結構いてさ。
 味はともかく、付け合わせにはなるだろ?」
 
蜃気楼の町で買い出しした食料も、そろそろなくなる頃だしと、
バッツが言うとフリオニールも頷いた。
 
「ああ。それに…この暑さにバテ易くなってるからな。
 精つけて乗りきらないと」
 
それを聞いたバッツは、にんまりとあまり良くなさそうな笑みを
フリオニールに向ける。
 
「特にフリオニールはライトと同じ天幕だからな。
 皆より余分に取らないと!」
 
キョトンとしたフリオニールだったが、バッツの言葉の意味を理解すると、
とたんに真っ赤になった。
 
「ライト激しそうだもんなぁ。
 この間は項に噛み跡が付いてたらしいじゃん」
 
「バ、バッツ!」
 
スコールが薬をくれたんだろ? とによによしながら、
フリオニールをからかうバッツに、川の方から賑やかな声が聞こえてきた。
 
他の皆が戻ってきたのだろう。
 
いまだ真っ赤なままのフリオニールにバッツはニシシッと笑って、
八ツ目鰻の入った網を手に取る。
 
「一人じゃ間に合わないだろうから、捌くのは手伝うぞ〜」
 
鼻唄を歌いながら炊事場の台へと向かうバッツに、フリオニールは顔を赤くしたまま、
口をパクパクさせていた。
 
その夜、いつもより激しい声が二人の天幕から漏れ聞こえたが、
誰の考慮か他の天幕より離されていたため、それが聞こえたのは
夜番のクラウドだけだった。
 
 
 
次の朝、出発できなかったのは言うまでもない。
 
 


 
とりあえず、クラウドご愁傷さま。←
 
土用の丑の日に、30分で書いた物。
 
…萌って素晴らしい、と思った。
 
小話のライトさんがはっちゃけてるのは、当サイトの仕様です。←
 
暑さの所為で脳内回路がショートしてます、はい。
 
 
2010.07.26 ギリギリ完成。
2010.07.27 UP!
 
 

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ