D Q IV
□不安
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― 不 安 ―<ピサ勇>
窓の外から風の音と、雨の音が激しく聞こえてくる。
時々、窓のカーテンの隙間からから稲光が差し込んでくる。
外は相当の嵐になっているようだった。
ピサロは寝台の脇にあるランプの明かりで、本を読みつつ、就寝までの時間を過ごしていた。
コンコンッ
かすかに部屋の扉から聞こえる音に、ピサロは読んでいた書物から視線をそちらに向けた。
コンコンッ
再度なった音に、ふう・・・とため息をつくと、寝台から立ち上がり、扉へ向かった。
「・・・・誰だ?」
「・・・・・・僕」
扉を開けると枕を抱えたアレクが立っていた。
「どうした?」
「入っても・・・いい?」
枕を抱きかかえながら、上目遣いにピサロを見上げている。
ピサロは無言で入るように促して、扉を閉めた。
「なにか、用があったのではないのか?」
ピサロはもう夜中とも言えるこの時間に自分の部屋に訪れた、アレクに話しかけた。
アレクは寝台のふちに座り、俯いたままだったが、ぽつりと言った。
「・・・・・・・・今晩一緒にいてもいい?」
「訳を聞いてもかまわないか?」
ピサロは怯えた様に俯いているアレクに語りかけた。
「・・・・怖くて。・・・・・・・雷が怖くて、眠れないんだ。どうしてか解らないけれど」
「なぜ、私のところへ来る?」
「・・・・・・貴方と一緒だと怖くなかったから」
確かに、何度か同室だった時にも、こういう嵐の夜はあった。
その時は別におかしな様子は見られなかった。
いつもなら2人ずつとかで分かれるのに、今日に限って人数分の部屋が空いており、久々に1人づつに部屋が割り振られた。
「今までは誰かと同室でもこういう日は少し怖かったんだ。でも、貴方と一緒に旅をするようになってからは平気になってたから大丈夫だと思っていたんだけど…」
「・・・・仕方が無いな」
ふぅ・・・とため息をつくと、ピサロはアレクの頭をなでた。
「少し窮屈かもしれないが、我慢しろ」
そういうとピサロは壁際の方で横になった。
「・・・・・ありがと」
アレクは頬を赤く染めながらも安心した微笑を浮かべた。
ピサロは、後ろ向きになっていたので見えなかったが、アレクが安心した気配は感じ取れていた。
これ以降、アレクは嵐の夜に必ずピサロと同じ寝台で眠るようになった。
― END ―
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