鋼 の 錬 金 術 師

□◆ SWEET・MEMORY
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「久しぶりだね…鋼の」
にっこりと明らかになにかを企んだ笑みで迎えられた。
「………」
「少し聞きたい事があるのだが…まあ座ってくれたまえ」
「報告書、持ってきたぞ」
大佐の机に置いた後、勧められるままに来客用ソファに座る。
「ああ…ごくろうさま。ところで…」
大佐の視線がある箇所で止まる。
(だからいやだったんだ)
ちっ、と顔を背ける。
「君は女性だったのかね?」

………

そのころ…
「はい、アルフォンス君」
「あ、ありがとうございます。中尉」
目の前の机にカップが置かれた。
ハーブティだろうか、なんとも香りが良い。
(こんな身体のボクにも中尉はちゃんと人として接してくれる…)
ほわわ〜んと和んでる内にいつもなら聞こえて来るはずの騒音がないことに気がつく。
(…おそいなぁ、兄さん)
「今日は随分と時間がかかってるわね」
向側に座ってお茶を飲んでいた中尉が呟く。
「いつもならとっくに出て来ている…」
ガッターン!!
なにかが倒れる音に、室内の中に緊張が走る。
「今の音…執務室からっすよね」
「いつもならすぐにエドワード君が飛び出して来るのだけど…」
「めずらしいっすね」
少尉と中尉が話していた。
(どうしたんだろう…兄さん)

………

そのちょっと前…

「…そんなことあるわけないだろ」
「じゃあ、胸にあるその膨らみは?」
びしっ!と指差されてしまった。
はふ〜、とめんどくさげに溜息をついた。
「…錬成に失敗したんだよ」
「は?」
「だから!…久々に錬成陣を描いてやろうとして……こうなった」


所在無さげに目を反らす。
「……はぁ」
「なんだよ!その何とも言えないような顔は!!」
呆れたような困ったような不思議な顔をしていた。
「とにかくコレを元に戻す方法も探さないと…」
胸の辺りをさすってみる。
その姿を見たロイは手を口にあてて悶えていた。
それを怪訝そうにみつめる。
(い、違和感が無いぞ!鋼の…)
まさに胸の大きさを気にしている少女のような仕草に、ロイが立てと言われても立てない状況になっている事をエドは知らない(笑)
「?…大佐?」
何も知らないエドは、理性が限界に達する寸前のロイの顔を首を傾げながら覗き込んだ。
きょとんとした眼差しで見つめられて落ちない男がおろうか、いやいない!
「鋼の・・・」
あっという間に机の上に押さえつけられ、エドは何がなんだかわからない状況になっていた。
その拍子に近くに置いてあったルームライトが音を立てて倒れた。

「た・・・いさ?」
普段目にする事のないロイの真摯な顔に圧倒され、身動きが取れない。
「鋼の・・・・・いや、エドワード」
「!」
今まで名前で呼ばれた事なんてなかったのに・・・。
急に名前で呼ばれ、驚愕したままロイの顔を直視する。
ロイの手が頬に優しく触れると、無意識の内にか摺り寄せてしまった。
そんな可愛らしい仕草に切れかけた理性を総動員させてなんとか保つ。
「エドワード・・・・」
「たい・・・んんっ」
最初は軽く口づけるだけだったが、徐々に深いものに変わった。
「ん・・・んんっ、・・・ふぁ、んんっ」
唇を合わせるたびに、静まり返った室内にぴちゃぴちゃと水音が響く。
「ん・・・ぷぁ」
十分に堪能し、エドが息苦しくなってきたころ、ロイは唇を解放した。
はぁはぁ・・・と荒い息が響く。
「なん・・・で、こんな事・・・するんだよ」
「あんな可愛い仕草をされればしたくなるだろう」
しれっというこの男、ロイ・マスタング(29)。じつは心の中では自問自答中。(笑)
「なっ・・・俺は男だぞ!」
「確かに元の身体は男だが、今は女だ」
「だからって・・・こんな・・・・こと」
顔を真っ赤に染めてロイから顔を逸らす。
まるで少女のように恥らうエドワードに、ロイは何かが切れる音がした気がした。
「エドワード・・・私はね、君の性別など気にしていないのだよ。エドワード・エルリックという人物がすきなのだから」


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