聖 剣 L O M
□始まりの夢
3ページ/4ページ
そうして数年後。
珠魅狩りの一味は規模を拡大し、珠魅を見つけると手当たりしだい襲う時代になっていた。
それまで他人事だと思っていた他の珠魅たちの中からも泣けない、涙が出ないと姫・騎士問わずに騒ぎ出した。
そして誰も泣くことが出来なくなり珠魅たちは多種族から身を守るために自分たちだけの都市に篭る事にした。
珠魅たちは特に食物を摂取しなくても生きていける。
きれいな水と空気があれば。
もし何かが食べたくなったら作れば良い。と多種族の所に極秘に買いに行けば良い事。
それまでは隠れてすもうと。
そして、帝国の珠魅狩り。
各地の煌きの都市から逃げ延びた珠魅たちが最後にたどり着いたのは若き都市長の納める煌楼だった。
そこまでも帝国の手は伸びてきていた。
負傷して身を寄せていた騎士の後をつけてきていたのだった。
なすすべもなくなった珠魅たちは覚悟を決めた。
そんな中、一人の捨石の座の姫が騎士の見舞いにやってきた。
本来ならおなじ場所で見える事もなかったであろう姫が、傷ついた騎士を見て涙を流したのだった。
その場にいたものは信じられない気持ちだった。
捨石の、いまでは名ばかりとなってしまっている姫が涙石を生み出したのだ。
騎士はその涙のおかげで元気になった。
そのことはすぐさま都市長に報じられた。
その報を聞くとすぐにその姫を玉石の姫に祭り上げた。
傷ついた騎士たちを見て姫は涙を流し続けた。
そして珠魅たちは帝国と戦争を開始した。
姫の涙を担保に。
しかしそれも長くは続かなかった。
突如として玉石の姫が騎士とともに姿を消したからである。
回復する事が出来る手立てがない今、一箇所にいるのは危険と言う判断から、珠魅たちは都市を捨て隠れ住むようになった。
・・・・
・・・・
・・・・
「もしかして、本に載っていた姫、じゃないのか?」
「たぶん・・・・私もそう思う・・・・」
誰を止めてほしいのか。
夢だけでしか見る事の出来ない自分が、今はただ無性に悔しかった。
―END―
あとがきへ→