D Q IV
□勇者と魔王の出会い
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「おじさん!」
アレクは宿屋に着くと、フロントに座っていた宿屋の主人に声をかけた。
「おや、アレクじゃないか。どうし…はは〜ん、さてはもう話が耳に入ったんだな?」
「へへへ〜」
アレクが外のことを知りたがってるのを知らない村人はいない。
だが、アレクが生まれてから今まで、この村は世間からその存在を隠されていたいわゆる隠れ里。
時折、街まで降りていく村人が帰ってくると、アレクは遅い時間まで街はどうだったか?と興味深々に問いただしてくるのだ。
「彼なら部屋にいるんじゃないか?ここから一歩も出ていないからね」
「お邪魔してもいいかな?」
「さあ…どうだろうねぇ。自分で聞いてごらん」
宿屋の主人はにんまりといつもの笑みを浮かべて、アレクを部屋へ案内した。
「すまんが旅のお方、ちょっといいですかね?」
ノックをして返事を待ちつつ、宿屋の主人が聞いてくれた。
「…なにか?」
部屋の中から聞き心地のよいテノールが聞こえてきた。
すると、扉が開き中から旅の詩人が出てきた。
「ほら、後は自分で聞きなさい」
宿屋の主人はアレクの背中を押すと、「私は仕事がありますので」とフロントへ戻ってしまった。
その場に残されたのはアレクとその詩人のみ。
「あの、村の外から来たんですよね?」
「…、そうですけど?」
「外の話、いろいろ聞かせていただけませんか?」
「いいですけど…なぜそんなに?」
旅の詩人は不思議そうに聞いてくる目の前のアレクを見ている。
「僕、村から出たことが無くて…外の世界にあこがれていて、いろんな話聞きたいんです!」
瞳をらんらんと輝かせ、旅の詩人に語りかけた。
「くすくす…こんな所ではなんですから、どうぞ入ってください」
アレクは笑われたことに少し恥ずかしくなったが、入るように促され、部屋の中に入った。
「しかし、驚きましたよ。このような村に君のような子供がいらっしゃるとは」
「??そうですか?ウチの村はあんまり外から人が来ないから他のところがどうなのかはわかりませんけど」
旅の詩人はくすくすと笑っている。
「そういう意味ではありませんが…まあいいでしょう。で、どんな話が聞きたいのかな?」
「えっと、街ではどんなことが……」
アレクは旅の詩人にいろいろなことを聞いた。
そして、夕刻近くになり、そろそろ帰らなくてはいけなくなった。
「もうこんな時間だ。帰らなくていいのかい?」
「わっ!そろそろ帰らないと…あ、あの!明日、村を出るまでまた話を聞かせてください!」
詩人がくすくす笑いながら頷くとアレクは「じゃ、また!」と、手を振りながら部屋を出て行った。
この後何が起こるかも知らないで。
それを見届けた詩人はにやりと笑った。
「見つけた」
− END −
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