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□膝枕の話
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夕食後、いつものように各々テントに戻り、寛いでいる時それは起こった。
野営している場所の辺りを見回りしてきたWoLに、同じテントを使う事になっていたフリオニールが声をかけた。
「お帰り、ライト」
「ああ、ただいま」
「どうだった?」
「この辺りにイミテーション達はいなさそうだ」
「そうか」
幸いこの付近はコスモスの力が強い場所で、比較的敵の出現率も低いようだった。
昼間に見かけただけでもその違いは明らかだった。
安堵の溜息をついたフリオニールを、WoLは静かに見つめている。
その視線に気が付いたフリオニールはコテンと首を傾げた。
「どうかしたのか、ライト?」
きょとんとしたその表情に、WoLの表情がぴくりと動いたように見えたが、直ぐにいつもの無表情になってしまったので
フリオニールは気が付かなかった。
「そういえば、昼間ティーダとなにやらやっていたな」
「え・・・・?」
思わず後ずさりしたフリオニールに、WoLはずいっと近寄る。
それはまるで妻の浮気を問い詰める夫の様だった。
「なにやら・・・って、ただ耳掃除をしていただけだけど・・・・」
「あんなに密着してするものなのか?」
何やらWoLの背後にずもももももと黒い気配が漂った。
「まあ・・・他人にやってもらう時は・・・そうなるな」
律儀に返したフリオニールの言葉に、WoLの瞳に怪しげな光が走った。
「そうか・・・・・、ならば私にもやってもらいたいのだが?」
「・・・・・・・・はい?」
「耳掃除を、だ。ティーダにはやったのだろう? 是非私にもやってもらいたい」
「ええ・・・・と・・・・・・、はい」
有無を言わさずな雰囲気を掴み取ったのであろうフリオニールは、顔を引き攣らせながら頷いた。
テント内は、夜の静けさもありシンと静まり返っていた。
そんな中、寝床に座ったフリオニールの膝に頭を乗せ横になったWoLの姿があった。
「なるべく痛くないようにはするけど痛かったら言ってくれ」
「ああ。多少の痛みなら耐えられるので大丈夫だ」
フリオニールの言葉に瞳を閉じたままのWoLから返事が返ってきた。
暫くの間、話も無く黙々と耳掃除を続けるフリオニールの姿と、WoLはその膝の上に頭を乗せ瞳を閉じたままであった。
向きを変えて反対の耳も掃除しようと、フリオニールはWoLに声をかけた。
「すまないが向きを変えてくれないか?」
「ああ、わかった」
フリオニールに背を向ける形で横になっていたWoLはそのままくるりとフリオニールの方へと体勢を変えた。
その体勢に驚いたのはフリオニールであった。丁度WoLの顔の部分が自分の・・・な部分に近づくその姿勢に、思わず顔を赤くした。
「あっと・・・その、ライト・・・・」
「なんだ?」
顔を赤くし目を逸らしながら言うフリオニールに、膝から見上げるWoLは怪訝な表情をしている。
「す、すまないが、その向きじゃなくて、べ、別の向きにしてくれないか?」
見上げるWoLの瞳と太ももに置かれた暖かい感触に、フリオニールは顔を真っ赤にして瞳を瞑りながら言った。
それを見たWoLは自分がどのような体勢でフリオニールの膝に頭を乗せているか、現状を理解する。
そしてにやりと笑い、膝に頭を乗せたままWoLは、フリオニールの顔を見上げる。
「別にこのままでもかまわないが?」
珍しく微笑みながら言うWoLに、瞳を瞑ったままのフリオニールは気が付かない。
「〜〜〜〜〜〜っっ」
フリオニールは恥ずかしさから閉じていた瞳をうっすらと開けると、微笑んでいるWoLの表情に現状を察した。
察したとたん、フリオニールはぷくーっと頬を膨らませて、赤い顔のまま顔を背ける。
「・・・ライト、貴方解っているんだろ?」
「クッ・・・・」
思わず噴出したWoLに、フリオニールはさらに顔を赤くした。
「フ・・・、すまない。こちら側を向けばいいのか?」
苦笑しているWoLは両膝の真ん中に頭が乗るように、向きを変えた。
「ああ・・・・。あんまりからかわないでくれ・・・・」
なぜか疲れた様子のフリオニールを、膝の上から見上げるWoLの顔は、少し意地悪そうに笑っていた。
「わかった。今度からは全力で・・・」
「しなくていいから!」
なぜか少し焦ったようなフリオニールに、WoLは笑みを深めた。
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