鋼 の 錬 金 術 師

□2006年 年賀フリーSS『隻眼の錬金術師』
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・・・・・・・・・・そのころの東方司令部・・・・・・・・・・



「・・・・・エルリック兄弟のその後の情報は?」

「まだです・・・・・・その後の情報はつかめておりません」

「・・・・・・・・・っ!」

ロイはぎりっと唇をかんだ。

麻薬組織の動向を探っていた部隊の通信不通。

最後の通信での情報。

折り重なるようにエルリック兄弟がイーストシティに訪れているという事。

いまだに挨拶に来ないエルリック兄弟。

この4点から、巻き込まれた可能性が高いと言えよう。

「・・・・・・・・・大佐」

「・・・・・・最後の通信までの組織のデータをここへ。・・・・もしもエルリック兄弟が巻き込まれているのなら、よほどの事がない限り摘発できるだろう。
 だが・・・・万が一という事がある」

「なるべく迅速に・・・・ですね」

「そうだ。彼らが自由に動けるのなら着くころには終わっているだろうが、そうじゃないことも考えておかねばならん」

「フュリー曹長、通信データを!」

「はい!」

「・・・・・無事でいてくれ」

誰にも聞こえないような声でロイは呟いた。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、話って?」

エドワードは着いた早々話を切り出した。

「くっくっく・・・・、そう急ぐこともあるまい。座ったらどうかね」

エドワードはむすーっとしたまま座ろうとしない。

「・・・・・・まあいい。本題に入ろう・・・・・・・・、ロペス、アレを」

「はい」

ロペスと呼ばれた男は1枚の洋皮紙を取り出してきた。

「ここに書かれているものを完成させてほしいのだよ。君ほどのものならできるだろう?」

「何で俺たちがそんなことしなくちゃならないんだ」

「賢者の石を探しているのだろう」

「!!!!!!!!!」

なぜこの男が知っているのか、ランバートは饒舌に語りだした。

「私も若いころ、捜し求めていた時期があった・・・・そのころの研究資料を取引として出そう」

ランバートはニヤリと笑うと胡散臭い笑みでエドワードを見た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・断る」

「・・・・・・欲しくはないのか?少しでも石に近づくかも知れないのだぞ?」

「ふつうなら喉から手が出るほど欲しいかもな・・・・・だが、この取引は受ける事はできねぇ」

ギンッとランバートを睨み返した。

「この錬成陣はある鉱物から抽出される薬物を倍に増やすものだ・・・・・・少量しか抽出できない鉱物の代わりに人間を使って、な」

「ほほう・・・・さすがと言うべきか。チラッと見ただけでそこまで分かるとは、たいしたものだ」

「俺も思い出したぜ。ランバート・ロリック・・・・・薬物錬成の錬金術師、妙薬の錬金術師さんよ」

その通り名を出したとたん、ランバートを取り巻く雰囲気が変わった。

先ほどまでの笑みとは打って変わって無表情になり、瞳がどんよりと濁った輝きを放っていた。

「なぜその名を知っている」

地を這うような低い声が響いた。

「東方司令部の資料室に過去の事件の詳細が乗っているやつがあったんだ。本当なら閲覧禁止の部類には入ってるはずのやつがな」

「管理がずさんだった、と言うわけか」

「あんた、イシュヴァールでの功績を称えられて・・・って資料にあったのになんでこんな・・・・・・」

ランバートは、ふっと自嘲した笑みを浮かべると、語りだした。

「功績と言っても所詮は人殺しの道具を作っていたに過ぎない・・・・・・殆どの者は英雄扱いしていくが、軍を嫌っている者達からは非難の嵐だった。
 私の家は元々名家でね、祖父の代で軍人になったのだが、国家錬金術師にはなれた者がいなかった。
 祖父も父も初歩的なものしか使えなくて、私が資格を取れたことを知ると2人とも喜んでくれた。
 ・・・・・・だが、それもあの戦いまでだった」

ランバートは握っていた手をぎゅっと強くした。





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