紅い胡蝶

□第二章
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佐助が傍を離れるのを知らないわけではなかった。
ただ、今はあの時のことを一人で考えたい―――そういう気分なのだ。


あの日―――初めて伊達政宗と出会った日。

俺は一度死んでいる。



毎日鍛練を惜しんだことはない。
雨の日も風の日も嵐の日も雪の日も。
戦に備え、お館様のため武田のため、強くなろうと精進した。
だからかはわからないが、名のある武将を幾人も討ち、己れの名をあげてきた。
誰にも負けぬよう努力をしてきた。


それなのに……!!!






俺は今、伊達政宗に生かされている。


あの時、武器を手放した俺を簡単に殺すことなど出来た筈。
何故、彼奴は俺を殺さなかったんだ…?

佐助が呼びに来たから、などという理由だけではないだろう。
そもそも伊達政宗という男は俺を殺す気などなかった…


そんな風に感じられた。


わからないことだらけだ。
しかも最後に伊達政宗が言っていたことも気になる。

『speed、身のこなしはお前の勝ちだが、power、staminaそれと戦いのtechnicは俺が上だ……お前には俺を越えることなんて出来ねぇ、you see?』



俺が伊達政宗を越えることが出来ないなどと…!!
思い出しただけで腸(はらわた)が煮え繰りかえってくる勢いでござるぅ!!!


「……ぅぉあおお!!!!「ハイ、ちょっと待てって!!」

柄にも合わず悩んでいたせいか、無意識に手は団子を地面に叩き付けようとしていたらしく、佐助が幸村の手首を掴んで制していた。

「す…すまぬ、佐助!!」

「大丈夫ってことよ。それより旦那、今から気分直しにちょっと付き合って貰えない?」

「気分直しとは…?」

「着いてからのお楽しみ、ってことで。お館様からは三日だけって約束で暇を貰っておいたから、な?」

「うむ。」


わけも分からず頷くと佐助は嬉しそうに笑って「支度〜♪支度〜♪」といいながら去ってしまった。







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