Rolling Lovers!
□4.最悪で最良の出会い
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着替え途中なのだろう、いつも店で付けているバンダナとエプロンが無い。
学生証の写真でもバンダナは無いわけだが、なんだか新鮮に見えた。
「ほら、お客様が見つけて下さったらしいわ」
「あ、はい、偶然見つけて…」
うまく舌が回らない。
「拾ったのが常連さんで良かったわね」なんて奥さんの声が、遠く聞こえる。
「……ありがとう、ございます」
言って白砂は、癖なのだろう、眉を寄せたまま、困ったような表情で笑った。 何故だろう、息が止まりそうだ。
「お役に立てて、良かったです」
その時の俺には、そう言うのが精一杯だった。
でも、出来ればずっと、いや、もう少し、この人と話をしたい。
それが無理なら、ずっと、見てるだけでもいい。
「じゃあ、今日はお礼に、サービスしなくちゃね」
にっこりと、奥さんが言う。
俺ははっと我に返る。