月華綺單

□3.Maitre
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森を更に奥へと進めば、そこには噂に聞いた、旧公爵家のものと思われる屋敷が建っていた。
背面には海が見えているので、少し行けば切り立った崖になっているのだろう。
さて、噂どおり屋敷は存在し、また目的だった令嬢にも出会えたのだが、男は内心複雑であった。

(まさか…こんなに幼いレディだったとは思いませんでした。美しいのは否定しませんが…)

何より食指が動かない。
かといって、今は他に行くあても無いので、黙って目の前の少女に従っていた。

少女が扉を鳴らし、叫ぶ。

「クレイ!私だ」

「はい、マスター」

扉の向こうから声がして、鍵が外される音がする。
そしてゆっくりと扉が開くと、長い栗色の髪を後ろでまとめた、メイド姿の女性がいた。

「お帰りなさいませ、マスター。……お客様ですか?」

「そんなものじゃない。客室の用意もいらんぞ。食堂へ、いつものブランデーだ」

「はい、マスター」

頭を下げると、クレイはどこかへと消えてしまった。

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