月華綺單

□4.La reine solitaire
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目が覚めると、すでに日は沈んでいた。
見慣れないベッドと部屋に、しばらく頭を働かせていたが、思い出すや、慌てて起き上がる。

「しまった…」

一方的とはいえ、使用人として留まる事になった翌日に、思い切りよく寝過ごしていたのである。
身支度を整えようとしたが、はたと思いとどまる。

(前の街を出る前に、身の回りのものを換金したのをすっかり忘れていました…)

今手にあるのは、数日着たままの一着のみ。
それに、使用人なら使用人の服が置いてあるのではないか?という疑問も浮上する。
とりあえず今ある服を着込むと、クレイを探しに部屋を出た。

自分が夜目がきくので気にしていなかったが、この屋敷内は、夜だというのに灯りが点いていない。
必要な所にしか点けていないのだろう、人を探すにはうってつけではあるが、少し寂しい気がしないではない。
階段を降りると、食堂から物音が聞こえた。
中の様子を窺うと、クレイが一人でテーブルクロスを整えていた。
こちらに気づいたらしく、振り向いて一礼する。
ソーンはそれに促される形で、部屋に入った。

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