月華綺單

□5.Maladie de carence
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ソーンが屋敷に来てから、3週間が過ぎた。
屋敷内でのあらゆる事象に、慣れてきた頃である。
とはいえ、特に仕事は無く、もっぱらローゼの相手をして過ごしていた。
ローゼの生活は夜型で、夕方日が沈みだした頃に起き、朝日が出る前に就寝する。
同じく夜が得意なソーンにとっては有り難かったが、たまに夜中、ひっそりと屋敷から姿を消すのだけは、心配でならないので、あまり快くはなかった。

さて、ソーンにはそれとは別に、自分の事で心配な事が1つあった。
先程も説明したが、屋敷に来てから3週間がたっている。
その間、何回か申し出てみたものの、外に出る事は許されず、いつしか自分も諦めるようになっていた。
しかし、諦めたのは心理的にであって、物理的には諦める事が叶わない。
はっきり言えば、そろそろ吸血しなければ、体が保ちそうにないのである。
今まで吸血行為に間が空く事などなく、至って健康体であったのが、最近良く立ち眩みを起こすようになっている。
クレイはもとより、何故かローゼに対しても食欲が湧かず、外と接点の無いこの屋敷では、血を調達する事ができない。

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