月華綺單

□6.Sent du sang
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「外に出る事を許してやろう」

望んでいた言葉のはずが、喜びより衝撃が先に来て、思わず「えっ」と叫んでしまった。

「何が『えっ』だ。体調が悪いんだろう、サッサと医者に治してもらえ」

あの後、なんとか自室へ戻り、ベッドで横になって少し落ち着いたところで、ローゼが切り出したのである。

「しかし…、私に出られたら困るのでは…」

「大丈夫だと言ったのはお前だろう?病人を無償で置いておくような、酔狂ではないんでな」

「はい…では、お言葉に甘えて…」

「出発は朝のうちにな、クレイには伝えてある」

次の朝、玄関にはクレイだけがおり、複雑な面持ちで出発する事となった。

クレイに教えてもらった通りに道を行けば、来た時よりも速く、町に着く事ができた。
町は今やっと起き始めたばかりで、人通りが少なく、全体的に真っ黒い長身の男は、否応なく目立っていた。
道行く人や、立ち並ぶ店の店員の視線が集まる中、花屋にある白い薔薇が目につき、足がそちらへと向かう。

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