月華綺單

□8.Mon rose
1ページ/4ページ

どうしてこんな事になったのだろう……。
目線がいつもより高く、体が重くて動きづらい。
先程血を吸い損ねた男は、町でこの事を話すだろうか。
大丈夫…例え何人で来ようが、私の屋敷にはたどり着けない。
この森は守られているのだから。


ローゼの父と母は、後の「Des Ancetres Vampires」、言い換えれば純吸血鬼である。
特に父は能力が高く、他の純吸血鬼にすら使えないまじないを使えた為、自尊心が強く、同時に他の仲間からは疎んじられる存在であった。
しかし、母だけは父を見捨てず、優しく支えていた。

母は薔薇のようだとローゼは思っていた。
華やかな美しさの中に、凛とした気品のある人。
ローゼにとって母は憧れで、同時に憎らしい人であった。
父は母を、ローゼには全く目もくれない程、心底好いていたのだ。
母に優しくされながらも、ローゼは母に対して、暗い念を抱かずにはいられなかった。
それは成長期の少女に良くある感情であったのかもしれない。

だが、その後、自分が誰かにとって、何にも代え難い存在になれるのかという問いに対して、ローゼは絶望的なNonを打ち出す事になる。

母が急逝した。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ