月華綺單
□9.Adieu
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闇を疾走していると、森の中を歩く黒髪の女が目に止まり、アルグレッドは止まった。
静かなその空間に重い音を鳴らして、地面に足を着ける。
女は、いきなり現れた男に、海のように青い瞳をまるくして驚き、彼女がつけたその名を呼んだ。
「ソーン…!」
「遅くなり申し訳ありませんマスター。驚かせてしまいましたか?」
「ち、違う!いや、お前私が分かるのか?」
「大きくなられただけでしょう?マスターはマスターですよ」
「へーぇ、こちらがお前のご主人様か」
ローゼの言葉を遮って、何者かの声がしたかと思ったら、また先程と同様に何かが落ちるような音がして、クラウズが現れる。
「誰だ貴様…」
「マスター、彼は私の古くからの友人で」
「申し送れました、クラウズと申します」
言ってクラウズは、ローゼに向かって恭しく礼をした。