永久

□主役
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ここがアニメの世界だろうが、今の私には関係ない。


だって、私は、ここにいるんだもの。
前の私を思い出したからって、今の私が変わる訳じゃない。


例え、目の前にアニメの主役が現れたとしても。


「ふわあ、絵、上手だねえ」



父親は執事の通常業務。母親はメイド業務。兄は学校。一人の時間、私は屋敷の中庭で絵を描いて遊んでいた。こんな子供を一人にしていいのか、両親よ。
そんな私の絵を後ろからのぞきこみ、感嘆の声をあげたのは、主人公、沢田綱吉だった。
今が話し的にどの時間軸なのかはわからなかったが、9代目がいる屋敷内に住んでるのだから、いつかは会うだろうと思っていたが、まさかこんなに早くに会おうとは。



「ここに住んでるの?」
「う、うん。…あっち」
「ああ、執事のロードさんの。じゃあ、君が日向ちゃんかあ。9代目が話してたよ、とっても可愛い天使がいるって」

母親のエリが私を産気づいたとき、屋敷の中だったらしく、しかも予想外に出てくるのが早かったため、私は屋敷で生まれたそうだ。しかも、9代目が好奇心で生まれてすぐの私を抱き上げたらしい。で、愛着がわいたらしく、私を孫のように可愛がってくれているのだと。


じゃあ、天使呼ばわりもするわな。反抗期には悪魔呼ばわりさせてやろうじゃない。


「いつもここにいるの?」
「うん、よく、」
「絵描くの、好き?」
「うん」
「そっかあ」


芝生の上に寝転がる主人公。会議でも出ていたのか、スーツがしわくちゃだ。確かに芝生はよく手入れされてるから、ゴミもないしふかふかで気持ちいい。私がずっと座ってても、腰が痛くないくらい。


「落ち着くね、ここ」
「うん」



沢田綱吉が目を閉じてしばらくして、遠くで彼を呼ぶ声が聞こえてきた。名残惜しそうに立ち上がる。



「ねえ、日向ちゃん」


私が顔をあげると、彼は笑った。
「また来てもいいかな?」
「うん」


心から嬉しそうに笑う彼に、私は疲れを隠した。
だって、この屋敷はボンゴレのもの。ひいては沢田綱吉のものなんだから。雇われ会社員の娘が、NOといえるはずもない。
勝ち組だねえ、兄さん。
まあ、無口な子供のフリで凌ごう。
 

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