神を信じない少年

□不神少年02
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 **side another**

 バケツをひっくり返したような土砂降りの雨が窓ガラスを乱暴に叩く。酷い大雨に加えて風も強く、傘をさしても殆んど意味が無くなるような嵐だった。もう二、三日はこんな天候が続いていた。
 しかし悪天候でも暗部の仕事は変わらず入ってくる。視界の悪い悪天候だからこそ逆に里内に侵入を試みるものが後を絶たないのだ。
 嵐のために午前でアカデミーは終了し、帰宅したレンは濡れた服を暗部服に着替えて任務の時間まで待つことにしていた。暗部服を剥き出しにしておくのは万が一誰かが訪ねてきたときに見られたら困るので、上に黒いパーカーを被っている。
 特にすることもないので、ベッドの上で丸くなって穏やかな寝息を立てていた。
 ナルトはまだ帰宅していないようで、カーテンの向こう側にも姿はない。
 不意にチャイムの無機質な音が響いた。来客のようだが、レンは少し身動ぎしただけで起きる気配はない。すると再びチャイムが鳴った。それでもレンは起きない。来客に敵意がないのが分かっているようだ。
 それから暫く音は止んでいたが、来客は焦れたようにまた再びチャイムを鳴らすと、狂ったかのように連打をしてきたのか室内は耳につく騒音に包まれた。
 流石に起きるかと思われたが、レンはもぞもぞと動いて再び眠りについてしまった。
 連打のチャイムが鳴り止んでつかの間、ドアノブが回される音が聞こえた。開かれた扉はナルトの方だったが、今度はレンは飛び起きて少し警戒するように身構えた。
 足音をたてないようにベッドから降りて仕切りになっているカーテンに近づく。敵意は感じられないものの、いつ襲いかかってきても対処できるように左手に気を集中しておく。
 そっとカーテンの隙間から様子を覗くと、同い年くらいの少年と五つほど年上だろう少年が立っていた。
「留守か」
「兄さん! 留守なのに勝手に入ったの?」
 大きい方がポツリと漏らすように呟いた方に、小さい方が驚いたように叫んだ。
 レンは小さい方の少年に見覚えがあるような気がした。ほとんどないレンの人物データベースの中を探すと、一人の人物と合致した。
 あぁ何だ
、うちはサスケだ。レンは納得したように内心呟いた。レンの記憶には周りで聞きたくもないのに耳が痛くなるほど聞かされた、何ともエリートらしいというのと、ナルトがライバル視している、という設定らしいというものだった。
 普段アカデミーで見る時よりも表情が豊かになっている気がしなくもないなと、隠れて観察しながらレンは思った。
 相手を確認したので別に危険性はないなと思い、レンは警戒を解いてベッドに戻って座った。流石に他人の気配がするところで寝る気がしないようで、ベッドの上で片膝をついた足の上に頭を乗せて灰色の空を眺めていた。
 突然閉ざされたカーテンが軽い音を立てて開かれる。レンは無関心にゆっくりと視線を音の元へと向けた。
「わっ! ちょっ……兄さん勝手……に……」
 自分勝手な行動をとる兄を咎めようと弟のうちはサスケも、レンの部屋に侵入してきた少年の後に続いて入ってきた。レンは自然とその無関心な視線をうちはサスケにも向けた。
 驚いたようにその黒い目を丸めてレンを凝視するうちはサスケ。まさか人が、レンが居るとは思ってもいなかったのだろう。興味無さそうにレンは視線をそらして再び灰色の空を見つめた。レンの態度に不満を感じたのかサスケは顔をしかめた。
「何で桔梗レンがここに」
「……それはこっちの台詞なんだけど」
 問い掛けられた質問にレンは軽く肩をすくめて言い返す。普段ナルトと話すときよりも声に温度がなく、無機質だった。
「サスケ、ここは彼の家だ」
 居て当たり前だろう、と今まで黙っていたサスケの兄だろう少年が感情のない表情のレンを睨み付けるサスケに答えた。レンは何も言わない。
「勝手に部屋に入って申し訳なかった。まさか室内に居るとは思っても見なかったのでな」
「……別に」
 どうでもいいと言いたげにまた目を反らして無機質に答える。それにまた文句を言おうと口を開きかけたサスケだったが、兄に手で制されて渋々と口を閉じた。
「帰ってくるまでお邪魔させて頂いても……」
「勝手にすれば」
 いいだろうか、と問い掛けようとした少年の言葉を遮るようにレンは顔を背けたまま即答した。
 
あまりにも失礼としか言い様のないレンの態度がサスケは相当気に入らないようで、不機嫌さを露にしてレンを鋭く睨み付けていた。それに反して全く動じる様子のないイタチは、プンスカ怒るサスケをレンの部屋にある一つに座らせ、頭をくしゃりと優しく撫でた。
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