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□burn with love
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「うぇー!!もう嫌だぁ〜ぁ!!」

テキストと睨めっこしていた一は大きく伸びをしながら叫んだ。

「勝手に人の家に上がり込んでおいてもうギブアップですか?金田一君」
一の様子を見て、向かいに座っていた青年が呆れたように問いかけて来る。
「だって仕方ねぇじゃん。先生に今度のテストが赤点だったら留年だとか言われちまったんだもん!美雪の奴が母さんと組んで塾に入れようとするしさ〜ぁ」
塾に行くなら明智さんに教えて貰う方がわかりやすい。と一がテーブルに突っ伏しながらぼやく。





ここは明智の住んでいる高級マンション。
久しぶりの休暇を自宅でのんびり過ごしていた明智の元に一が押し掛けて来たのは4時間程前の事だ。
捨てられた子犬のような目をした一を追い返すこともできず家の中へ招き入れた。3時間程勉強を見て夕飯をご馳走し、さあ後輩戦だと再びテキストに向かった矢先、一が冒頭のギブアップ宣言をし出したのだ。


「大体さぁ〜、ダルくて飯喰った後に勉強なんか出来ないよ」
テーブルにほっぺたを付けたまま上目使いで明智を見る
「では少し食後の休憩をしましょう。コーヒーでいいですか?」
「あーい。良いでございますよ」
テーブルにおでこを付け、手だけを振る一を見ながら仕方のない名探偵さんですね。と呟き明智はキッチンへと移動した。





(まさか私の所に押し掛けてくるとは思ってませんでしたね…)
明智は嬉しい誤算だと嬉しそうに頬を緩めながらコーヒーを入れる。
以前一度だけ一のあまりの落ちこぼれ加減に見かねて勉強を教えた事があったが自分の厳しい教えっぷりに一に「鬼教師!」などと喚かれたので、明智はもう自分の元には教わりに来ないだろうと思っていた。



実を言うと明智は金田一一に好意を寄せている

友人としてではない。

恋愛感情の だ。

しかしいつもの癖で顔を合わせると一をからかって怒らせてしまう。嫌われてはいないにしろ、好意を持たれている事はまずないだろうと思っていた。
だからお世辞だったにしろ、塾に行くなら明智さんに教えて貰う方がわかりやすい と自分を頼ってくれた事が嬉しかった。
「せっかく頼って来てくれたんだし、赤点はとらないようにしなければいけませんね…」
そう言いながら2人分のコーヒーを持って明智はリビングへと戻った。








リビングに戻ってみると一は先ほどと同じ格好で規則正しく寝息を立てていた。
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