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□彼しか知らない
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「金田一の奴、どこ行ったんだろ?」

村上草太は放課後の校舎を歩き回っていた。
今日はミス研のミーティングがあるのだが、部員のはじめが例の如く姿を表さない。
仕方無く探しに行こうとした部長の美雪に代わり自分が捜索に出た。

「ったく、七瀬さんに迷惑ばっかりかけやがって…」

なんて羨ましい奴なんだと一人ぼやく。
草太は美雪に好意をよせている。だが、当の美雪は世話の焼ける幼なじみに夢中で自分が入っていく隙がない。
はじめがもう少し自立してくれれば美雪も自分の事を見てくれるのに…といつも思っていた

「校舎にはまだ居るみたいだしなぁ…」

下駄箱を見ると見覚えのある靴が入っている。
これだけ探しても見つからないとなると思い当たる場所はもう一カ所しかなかった。









『だからさ〜、今日行っても良い?』

屋上のドアを開けると、はじめの声が聞こえた
少し開けたドアの隙間から見ると、誰かと電話をしていた。

『だって!担任に課題渡されてさぁ、提出しなかったら評価1にするって言われたんだぜ?』

誰と電話をしているのだろうか?
喋っているはじめの顔は幸せそうな、男に対して使うのはどうかと思うが可愛らしい笑顔をしている。

『え?マジ!?サンキュー明智さん!!』

(明智…って…確か獄門塾ん時の警視さんだっけ?)

以前、獄門塾というスパルタ塾で起きた殺人事件…
その事件をはじめと解決した警察官も確か同じ名前だった。

(アイツあの人と仲良いんだ…)
獄門塾で2人を見た時は言い争いばかりであまり仲が良いようには見えなかった。
だが今は楽しそうに話をしている。
しかも、会話の内容から推測するに、この後2人で会う約束までしているようだ。








『うん。じゃあ後でな!…え?ッバカ!!………』
(?どしたんだ?)
電話を切ろうとしたはじめの顔が急に真っ赤になったかと思うと俯いてしまった。
(約束ダメになったのか?)
いつものはじめなら絶対に見せる事のない切ない表情に心配をしていると、周りに聞こえるか聞こえないかの小さな声でポソリとはじめが囁いた。


『……俺も……愛してる…よ』





草太はビックリした。

はじめが電話の相手に、しかも男に『愛してる』と、囁いたのだ。
どんなに仲が良くても本気で愛してるとは言わないだろう。ましてや男同士だ。という事は…
(つまりは…そういう関係なんだよな…?)


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