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□ねこ。
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「明智さん、風呂サンキューな」
濡れた髪をタオルでガシガシ拭きながらスウェット姿でリビングに入って来たはじめがソファーに座っていた明智に声を掛ける。
明智は読んでいた本を閉じ、視線をこちらに向けてきた。
「湯加減はいかがでしたか?」
「さいこーでした」
手に持っていたミネラルウォーターを飲みながらはじめが答えると明智が急に手招きをしてきた。
不思議に思いながら側まで行くと、自分の足下を指差してココに座れとジェスチャーしてくる。
「?」
良く分からないが指示された通りにフローリングに座ると背後から、肩に掛けていたタオルをスルリと奪われた。
「濡れたままでいたらいくら君でも風邪を引きますよ?」
そう言いながら奪ったタオルではじめの濡れた髪を拭き始める
「何だよ?いくら君でもって」
「何とかは風邪を引かないと言いますから」
「へーへー。どーせお馬鹿さんですよー」
文句を言いながらも本当は、明智にこうして甘やかされていると自分が愛されている事を実感できて何だか嬉しくなる
大好きな大きな手が、綺麗な指が、包み込むように髪の毛の水分を拭き取っていく。
その心地よさにはじめの瞼は次第に重くなっていった
「はじめ君、終わりましたよ?」
「ん〜?」
明智の声に我に返る。
頭を触ると髪は完全に乾いており、明智がテキパキとドライヤーを片付けている
「んぁ…ありがと。俺寝てた?」
「ええ。それは気持ちよさそうに」
再びソファーに戻って来た明智にゴメンと軽く謝る。すると、またしても無言で今度はソファーをポンポンと叩き自分の隣に座れと指示された。
「何?」
不思議に思いながらも隣に座る。すると腕を強く引かれ、気が付くと明智の膝の上に自分の頭が乗っていて…これはいわゆる膝枕の体制で。
「なっ!何だよ!?」
「髪の毛はちゃんと乾いたみたいですね」
確認するように髪を指で梳いていく。
膝に乗せられて、頭を撫でられて…その様子がまるで
「猫かよ…俺は。」
「いや、どちらかというと狸か…それとも小猿か…」
「イヤミ野郎〜」
「フッ、冗談ですよ」
「もう知らねー」
不貞腐れているのに膝から逃げようとしないはじめを見ながら明智が微笑み頭を撫でてやる
「君を飼うというのも楽しそうですね」
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