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□雪、こんこん
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日曜日の朝。気持ち良く眠っていると、可愛い恋人に起こされた。
「ねぇ!明智さん起きてよ!!」
あまりの大きな声に目を開けると、大きな瞳を更に大きくさせて嬉しそうにこちらを見下ろしている。
時計を見るとAM7:00
せっかくの非番なのでもう少し遅く起きようかと思っていたのに。と少しうなだれる
「…何ですかはじめ君?そんなに大きな声を出さなくても聞こえていますよ…」
「ゆきだよ!雪!!明智さんホラ!!」
そう言いながらはじめが閉まっていたカーテンを開け放つ。
窓の外の明るさに目を細めながら見ると、なる程空から白い雪がヒラヒラと舞い落ちていた。
「結構積もってるんだぜ♪なぁ!外に行こうよ!!」
ベッドに飛び乗ってこちらを見ているはじめは、まるで散歩に行こうと強請っている子犬のようで、不覚にも可愛いと思ってしまった自分に苦笑した。
だが、それとこれと話しは別だ。
「私は遠慮しておきますよ。どうぞお一人で遊んで来て下さい」
ベッドに再び潜り込みながらそう告げると、はじめがブーイングを上げながらのし掛かって来た。
「えー!!一人じゃつまんねーって!一緒に出掛けようぜー?」
どうしても雪で遊びたいのか、はじめは一生懸命説得してくる。それが何だか可愛くて、少し意地悪な気持ちになってきた。
「ー………」
「明智さん?寝ちゃったの?」
布団に潜り込み黙り続けていると、はじめが軽く揺すってくる。それでも寝たふりを決め込むと、今まで賑やかだった寝室が急に静かになった。
「…ちぇっ。何だよ」
(拗ねちゃいましたかね?)
はじめの少し機嫌の悪そうな声音を聞いて布団の隙間から様子を窺う。
はじめはベッドに腰を掛けて寂しそうにこちらを見つめていた。
もし本当に、彼に犬の耳と尻尾が生えていたなら、間違いなくシュンと垂らしているだろうと思える位に残念そうに肩を落としている。
「ちぇっ。もういいよ俺一人で行けば良いんだろ」
そう言うや否や、立ち上がり寝室を出ようとドアへと歩いて行く。
(少しからかい過ぎましたね)
まさか、ここまで残念がるとは思っていなかった
雪位の事でこんなに拗ねるなんて、何て幼くて、何て可愛いらしい恋人なのだろうか。
「…はぁ〜ぁ」
ドアノブに手を掛けたはじめが深いため息を一つ吐く。
(…仕方がないですね)
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