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□ちょこれーとキッス
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今日は2月14日

女の子が好きな人にチョコレートと一緒に想いを告げる特別な日。

そんな大切な日なのに俺はとてもイライラしていた。
その原因は、目の前のこの光景。

警視庁の歩きなれた廊下に湧き上がる人だかり…囲っている婦警さん達の手には、大きさの違う、色とりどりにラッピングされた包みがあり、我先にと中心に居る男性に手渡そうとしている。

『明智警視〜!チョコレート貰って下さい!!』
『警視〜!!私のも貰って下さ〜い!』


婦警さん達が必死になってチョコレートを渡そうとしている男性、その名も明智健悟。
コイツが、俺が今日わざわざ警視庁まで来た理由だったりする。

「流石エリート警視様はおモテになりますね〜」
人だかりの中で困った顔をしている明智さんにイヤミっぽく声を掛けると明智さんがこちらへと顔を向けてきた。

「金田一君!?どうしたんですか?」

「別に〜。アンタに用事があったんだけど忙しそうだし?帰ろっかな〜」

もちろん帰るつもりなんて無いけれど、イライラしてつい嫌味を言ってしまう。
俺のイライラムカムカに、気付いているのかそうでは無いのか、明智さんは群がる婦警さん達を宥めて俺の方へ寄ってきた。

「すみません金田一君、すぐに行きますから一課で待っていて下さいますか?」

「ん。分かった」

俺の返事を聞くと明智さんは再び人だかりの中に入って行く。
その姿はまるで肉食獣の中に自ら入り込む哀れな草食獣のようで、何だか可哀想になってきてしまった。








「モテる男も大変なんだなぁ」

一課のソファーに座りながらぼそりと呟く。
明智さんに言われた通り一課に入ると、刑事さん達は殆どが定時で帰っていて部屋の中には当直の刑事さん達数人とオッサンだけだった。

「まあ、あれだけの数貰っちまったら、来月が大変だわな」

俺の独り言を聞いてオッサン達が話しに入ってくる。
みんなお茶を飲みながら他人事のようにしみじみとしている。良く見てみると、みんなチョコレートらしきものはどこにも持って無い。不思議に思った俺は、素朴な疑問を聞いてみることにした。

「オッサン達は貰ってないの?」

そう聞くと一瞬部屋の空気がピシッと凍りついた気がした…
みんな顔が引きつっている。
しまったι俺もしかして、触れちゃいけない事に触れた…かも…


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