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□彼しか知らない
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相手が男だというのにも驚いたのだが、何よりもはじめのあんなに幸せそうな顔を見た事に一番驚いた。

(金田一でもあんな顔するんだなぁ…)

と、部室へと続く廊下を歩きながら草太は考えていた。
とろけそうな笑顔で、まるで恋する女の子のような…見ているこちらが恥ずかしくなる。そんな顔だった。
いつもボケッとしていて冴えないはじめには恋愛など関係の無い話かと思っていたのに、みんなの知らない所でちゃんと愛を育んでいる。周りの人間が見たことのない笑顔を愛する人に向けているのだ。

(七瀬さんにはもう帰ってたって言っておいてやろう)

明智に会えると分かった時のあの笑顔を見たら部活に出ろと声を掛けられなかった。

(まあ、俺もアイツが居ない方が助かるしな)

きっと今頃幸せそうな笑顔をニヤニヤと浮かべて、駅までの道を走っているんだろうな…。
そんなはじめを想像してクスクス笑いながら草太は部室のドアを開けた。





         end.
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