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□sprout
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「さて、そろそろ寝ますか…」

ソファーに腰を下ろし、事件の報告書に目を通していた明智が呟く。
時計を見れば時刻はもうすぐ午前1時になる所だ。


函館の異人館ホテル

そこで起きた殺人事件に巻き込まれたはじめから連絡が入ったのはつい数日前の事だった。
事件は解決し、東京に帰る筈だったのだが、同ホテル内に何年も前に『麻薬の密売人が隠した』と言われていた麻薬の隠し場所の謎が解けたとはじめが言い出し、一行は慌ててホテルに舞い戻った。
麻薬は発見する事が出来たのだが、その日の内に帰る事が出来なくなってしまったはじめ達に、ホテルのオーナーが「もう一泊」と部屋を用意してくれ今に至る。

(明日は東京に戻ったらそのまま登庁して仕事をする予定なので、あまり夜更かしは出来ませんね…)

報告書を備え付けの机に置き、ベッドに入ろうと布団を捲ると明智の動きがピタリと止まった。

「…」

(気のせいですかね…?廊下から人の気配がしたような…)

しばらく黙ってドアの方を見ていた明智がベッドを降りドアへと移動する。誰も居るはずが無いと思いながらも念の為、と理由をつけながらドアノブに手をかけた。




   カチャリ


ゆっくりとドアが開く


「!」

開いたドアから廊下を見た明智はドキッとした


「金田一君…?」

開いたドアの向こうにはじめが立っていた。

「………」

黙ったままのはじめは、上下スウェットで荷物の入ったカバンを両手で抱くように持ち、明智の足下を見つめるように俯いて立っている

「金田一君、どうかしたんですか?」

「………ぅん……」

問い掛けると蚊の鳴くような小さな声で答えてくる。明らかに様子のおかしいはじめに、明智は彼に何かがあったのだと察知した。

「取りあえず、こんな所ではなんですから、中に入りなさい」

そう促すのだがはじめは黙ったまま全く動こうとしない。明智は仕方なくはじめの背中を押して部屋へと招き入れた











「どうぞ。少し落ち着きますよ」

ソファーに座って黙り込んでいるはじめに、部屋に置いてあるインスタントのカフェオレを淹れたカップを渡す。

「……さんきゅ」

カップは受け取ったのだが口を付けず、手のひらで包み込むように持ち、また俯く。

「……………」

「…」


部屋の中に暫し気まずい沈黙が続いた。

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