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□無題
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広い割に風通しが悪い体育館は生徒達の体力をことごとく奪い去る。
それに加えて校長のダラダラした長話を聞かされるものだから精神的にもいっぱいいっぱいだ。
汗が額から流れ落ちる。
(何で部活でもないのにこない汗かかんといかんのや……)
勘弁してぇな、という思いをこめて包帯を巻く腕で汗を拭う。
周りに目をやれば、向こうで金ちゃんが茹(ウダ)る暑さに相当参ってるのかタオルを被って頭を垂れていた。
不意に脇腹を小突かれる。
隣のクラスの千歳だ。
「何や?」
「オサムちゃん見てみ」
千歳が指差す方を見やる。
そこにはテニス部顧問であるオサムちゃんが上の階の手摺に肘をつき、頭をそれに預けて鼾をかかない程度に眠っていた。
2階の生徒の監視係を利用して居眠りとは……。
「流石オサムちゃん。ズル賢いやっちゃ」
「まだしばらく話は終わりそうにないばい。俺らも寝る?」
「アホか。千歳なんぞ目瞑っただけでソッコー先公にバレるわ」
小先頭で並んでいるため白石と千歳は一番後ろの列になる。しかも教師は横の壁にそって各々立っているから居眠りならもってこいだ。
しかし例外もいるわけで。
194cmある千歳は最後尾にいても周りより頭ひとつ分大きい。
白石の言う通り居眠りをしたところで教師に見つかるのも時間の問題だろう。
考えを巡らせている今でさえ列の中間にいる2年の財前が担任だろう教師に頭をはたかれたのが見えた。
アホな考えはやめやめ。あと少しの辛抱や、と腹をくくったと同時にまた千歳に小突かれた。
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