婆沙羅3
□姐さんに相談だ
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「戦友なんて生易しいもんじゃねぇ」の続き的な。
「―――なぁ、サヤカ」
「何だ。どうした、元親」
「…俺ぁ、どうしたらいいんだろーか」
「一体どうしたんだ。お前らしくない」
「うるせぇ、俺だって悩む時くらいあらぁ」
「…そうだったのか」
「何だ今のその間はよ」
「大した意味はない。それで? お前は何を悩んでいるというのだ」
「いや…最近、しつこく言い寄って来やがるのが居てよぉ……どうしたらいいか分からねぇんだ」
「お前に言い募る人間など幾らでも居るだろう。女ならば言うまでもなし、お前の人間性を慕いやって来る男も多い筈だ」
「その言い募って来る奴なんだがよ、サヤカ。そいつ、俺に何つったと思う?」
「さぁな。何と言ったのだ」
「…退くなよ?」
「程度によるがな」
「…………」
「…………」
「…嫁に来いって言われた。正真正銘の野郎に」
「嫁に?」
「…おぅ。嫁に」
「…………」
「……おい。退くなっつっただろーが、サヤカ!」
「いや、すまない。予想外の事だったからな」
「俺も未だに信じられねぇよ…いきなりあいつがそんな事言い始めるなんてよ…!」
「……元親、お前の言う“あいつ”というのはもしや安芸の毛利の事か?」
「何で分かった」
「お前関係で思い付く男などあの男くらいしか居ない」
「そうか……はぁ…」
「…そんなに強烈なのか」
「この間なんか船にまで乗り込んで来やがった。挙げ句の果てに、あの野郎、俺に……」
「どうした」
「…っ……、…!」
「落ち着け、元親。ゆっくりでいい」
「………せ…接吻、してきやがった……」
「…………」
「もう…俺ぁ立場がなくなってきた……」
「そうか」
「…………」
「…………」
「…元親、お前はどうなんだ」
「あぁ?」
「お前は毛利の事をどう思っているのだ。貴様に嫁に来いという程非常識な男だが、元はお前の戦友であり好敵手だったのだろう?」
「あ、ああ…そりゃあ……」
「そうして言い寄られて、お前はどう感じたのだ。嫌悪を抱いたのか?」
「流石に嬉しいと思う訳ねぇだろ。…だが……」
「…………」
「い……嫌でもなかった…」
「…そうか。ならそれでいいだろう」
「いいって…何が」
「元親、お前が悩んでいるのは毛利にではなく自分の心にだ。完全に拒否出来ない自分の心に苦悩しているのだろう?」
「それは…その…」
「ならば私がどうこう出来る事ではない。お前はお前で自分と向き合うくらいしか解決する術などないのだ」
「…そういうモンか?」
「そういうものだ」
「…………」
「…まぁゆっくり考える事だ。決めるのはお前なのだから」
「ああ…そうだな。そうだよな。……すまねぇ、サヤカ。ありがとな」
「ふふ……やっと普段のお前に戻ったな」
「おう」
姐さんに相談だ
(…ところで元親、)
(あん? どうした、サヤカ)
(いい加減その名で呼ぶのを止めろ。何度も言っているだろう)
(あ、ああ。今度からは気を付けるぜ、サヤカ!)
(はぁ…もういい)