刀*語 二本目

□【真庭忍軍十二頭領乃題】
2ページ/15ページ






なぁ、俺は別に寧ろ卑怯卑劣な忍って訳じゃなかったと思うんだよ。


接待好きだし、人当たりも良い方だし。
だからこそ逆に警戒される事もあったんだろうけど。
確かにいつの間にか巡ってきた仕事だったかもしれない。
だからって別に人を騙してまでそんな事してた訳じゃない。
しようと思ってた訳でもねぇんだ。

俺は俺自身でさえも本当の自分が分からねぇ。
元々こんな身体だったんだ、元の姿なんて有って無かった様なものだったかもしれねぇ。
それでも俺は生きてた訳なんだ。
存在してた筈なんだ。
仲間も居たし友達だって居た。
一緒に仕事をした人間だって沢山居た。

俺はただ覚えていて欲しかったんだ。
どんな形であれ俺が居たっていう記憶を残したかった。
八方美人になりたかった訳でもないけれど、俺にはあれが精一杯だった。
だから仲間であっても友達であっても仕事相手であっても敵であっても。
それは全部俺の為にやった事だったのだから後悔はしない。


それでもなぁ。
少しくらい報われたかったとも思うぜ。


お得意の機嫌取りにわざと負けて喜ばせた。
里の為に刀を奪って戦った。
誰も俺に命令した訳でもない。
ただ俺は俺の為にやってただけだったのに。
存在意義を確かめたかっただけなのに。
それが裏目に出た俺はやっぱり、報われねぇのかな。

ああ、そうか。
これが、自嘲っていうヤツなのか?
初めて浮かべた空元気の笑いは、誰にも見られる事は無くて。
唯一報われた事だと思えば、冥土に行くのも悪くねぇよな。

俺は記憶の中ではあくまでも、接待好きの忍のままで居たかった。






























どっちつかずの蝙蝠
(笑って笑って)






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ