刀*語 二本目

□パンドラ
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鳳左。左右独白、病み気味。










めにみえなくてもさわれますか。
こころにいきてればあえますか。
「人」の「夢」と書いて「儚い」のは
どうしてなのかをしってますか。


























何故、こうなってしまったのだったか。

薄く、緋色に染まった視界を空に向けて考える。
更け掛けた東雲に冷えた風が顔の傷口を撫でていく。
心だけが何時までも血を流し、痛み続ける。

そんな記憶の最奥の悪夢が蘇る。
まるで忘れるなと囁く様に。
訣別の日は未だ息衝いて、思考を麻痺させに掛かる。
忘れようと無意味な努力をする私を嘲るかの様に。

未練はないのだと言えば嘘になる。
だが否定し忘れ、捨て去ろうと努める私を誰が咎めよう。
何もかもを捨て去り、別人として生きようとする私を。
生き甲斐を見付けた私を、尚も押し止めようとするのは何故なのか。

或いは。
私が、未だ棄てられないのか。

私の全てだった、あの朱色の面影。
忘れられないのではない、忘れたくないのか。
心中で歯止めが掛かるのだろう。
それだけ私は想いを懸けていたのだから。
記憶は何時までも蔓延り続ける。
逃げようとすればする程雁字搦めになる。

それでも、私は。
例えばそれが生き地獄の様な堪え難い所業だとしても。
焼かれる覚悟は出来ている。
逃げ続ける事が私の出来る唯一の生きる道。
ならば、もう、私は。


問い掛ける事を止める事にした。






























さよなら、パンドラ
哀しいことや苦しいことを
全てパンドラの箱の中
詰め込んできた。
見て見ぬフリをして
傷ついてばかりいるのに
明日もまた、
繰り返すのですか?







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