キリリク文
□真庭忍軍枕大戦
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蝙「―――…の!」
ばふっ!
突如互いの牽制が解かれたかと思えば、鳳凰の顔面に高速で枕が叩き付けられる。
当然だが元凶は蝙蝠の後ろに立っていた川獺と白鷺だ。
どうやら蝙蝠が腰を屈めた瞬間に鳳凰に投げ付けたようだった。
流石真庭忍軍、実質的な上司である鳳凰の顔目掛けてとは容赦もへったくれもあったものではない。
そう右衛門左衛門は独り言ちながら、一応旦那である男に恐る恐る声を掛ける。
直立不動、顔面には枕で微動だにしない彼だったが、蝙蝠達の声を聞いて直ぐにまた正気に戻った。
川「うぉ、当たった!」
白「石流、ぉお!」
蝙「きゃはきゃは! これで鳳凰さん一回死亡な!」
鳳「…………」
左「…ほ、鳳凰……」
蝙「顔面に三回当たったら負け。それ以外だったら何処に当たっても安全地帯。どうだい、乗るかい鳳凰さんよ!」
鳳「………蝙蝠…」
不意に鳳凰の顔に張り付いていた枕がぽろりと落ちる。
しかしそれが既に敷いてあった誰かの布団の上へと落ちる前に、その枕を鳳凰が掴んでいた。
ぎし、と中身の綿が飛び散るのではという程力強く掴み、普段の余裕染みた声色とは違ったおどろおどろしい声で応えた。
鳳「おぬし……我に喧嘩を売るとは良い度胸ではないか…」
蝙「きゃはきゃは! そうこなくちゃな!」
左「ほ、鳳凰お前…」
鳳「下がっていろ、右衛門左衛門。これは我の、おぬしの亭主としての闘いでもある」
左「は?」
蝙「きゃはきゃは、面白くなってきたんじゃねーの!?」
川「だな」
白「なだうそ」
狂「ちょっとちょっと、まだやらないの? 早くしなさいな」
蝙「鳳凰さんが枕投げたら始めるぜ!」
狂「じゃあ、たった今から始まりなのねん」
鳳「覚悟するがよい…積年の団子の恨み!!」
川「なんか、主旨変わってね?」
珍しく感情剥き出しに鳳凰は三人目掛けて枕を投げる。
寧ろ投擲技と言っても良い程の速さに相当激怒しているのが如実に知れる。
心無しか彼の背後に修羅か羅刹か、まぁそんな様なものが見えるのだから余程である。
いよいよ始まった壮絶な枕投げ。
そのを間の前にして、右衛門左衛門は取り敢えず今いる部屋の隅に敷いた自信の寝床の上でそのを観察する事にした。