復活連載

□9.決闘・前
2ページ/11ページ







「あら、スクアーロ」


屋敷に帰って来ると、ルッスーリアがせっせとティーセット一式を用意していた。
パッと見いつもと変わりないと思うが、そのティーカップは客人用の格式張った模様を呈しており、オレの機嫌を損ねるのに充分な効果があった。


「ゔえぇ……客でも来てんのかぁ?」
「ええ、まぁね。…そうだ、スクアーロ。貴女も一緒にいらっしゃいな」
「はぁ゙っ!? 何でオレが……っ」
「話がスムーズに進むからよ。さ、いらっしゃい!」
「…?」


ルッスーリアの言っている意味がよく分からなかったが、取り敢えずザンザスが執務室に居るのなら行っても良いと思う。
この間の様に、彼の居ない時の客人の来訪ほど気不味いものはない。
また不快な思いをする様な事は、あって欲しくないものだ。


「重要な話なのかぁ?」
「うーん…それは貴女の捕らえ方によるわね」


多分大丈夫でしょう、とルッスーリアは笑って助言する。
だがあまり良い予感がしないのは何故だろうか。


(ザンザスの超直感でも感染ったかぁ……?)


などと下らない事を考えながら、トレイを持ったルッスーリアの後ろを歩く。
ザンザスの執務室の前まで来た時には、もう既に嫌な考えは頭の片隅へと押しやられていた。















コンコン───…


「…入れ」
「失礼致します」


軽快なノックの音と共に、ルッスーリアが、恭しく執務室の扉を開ける。
その後に続いて入ったオレも、ルッスーリアを真似て一度だけ深く頭を下げた。

すると、室内から聞き覚えのない男の声が2つ聞こえてくる。
不機嫌そうなザンザスの声音も。


「ああ、彼女ですね?」
「この子が、噂のスクアーロ…」
「…おい、オッタビオ。俺が何時俺のものの名を呼んでも良いと、テメェに許可を下した?」


きつい眼力で、ザンザスは眼鏡を掛けた長身の男を睨み付ける。
それに臆したかの様に、眼鏡の男は強張った笑みを浮かべ、彼に謝罪の言葉を紡いだ。

少し、ザンザスの言葉が嬉しかったのは、内緒にしておく。


「申し訳ありません、ザンザス様。まさか今此処でお会いできるとは思わなかったものですので…」
「不可抗力ですよ、ザンザス様。私も、彼女に会えて内心とても嬉しいのですから」
「…………」
「………あ…」


ザンザスを諫める様に口を開いた男に、思わずオレは小さく声を上げてしまった。

金色の髪に、碧く澄んだ空色の瞳。
ボンゴレの独立暗殺部隊・ヴァリアーのボス──剣帝テュールだ。

9代目の右腕でもあり、良き友でもある彼が、ザンザスを訪ねて来たのは初めてである。
いや…それはオレの思い違いかもしれないけれど。

とにかく、この屋敷を訪ねて来たのは初めてだと思われる。
ザンザスが、一方的に彼らを毛嫌いしているから、なかなか会おうとしないのだ。


「…まぁ、この話はザンザス様の方でお話し下さい。その方が彼女も気が楽でしょうし」
「返事は私共から後々連絡させて頂きますので、その際に」
「それでは、お邪魔致しました。色良い返事をお待ちしております」


2人は応接用のソファから立ち上がると、ザンザスに深々と礼をし、オレの横を軽く会釈しながら歩いて行った。
ルッスーリアがせめてお茶でも、と呼び止めたけれども、2人は丁重に断りを入れて執務室を後にした。

その別れ際に、テュールがオレに向かってニコリと微笑んだのを、オレは見た気がした。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ