復活連載
□16.告知
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「───ス……ボス、」
「!」
ふと気が付けば、ドアの向こうから聞こえる幹部の声と何度も叩かれるノックの音。
内心慌てて入室の許可をすると、直ぐにルッスーリアが執務室に入って来た。
周りの音に注意が働かない程意識を飛ばしていた事に小さく溜息を吐く。
それを見ていたらしい目の前の幹部は、苦笑を報告書と共にこちらへと寄越した。
「ボス、大丈夫?」
「…何の話だ」
「んもぅ、とぼけても駄目よ。スクアーロの事なんでしょう?」
「…………」
「昨日の今日なんだもの。仕方ないわよね」
スクアーロ、という名を聞いて、酷く動揺している自分がいる。
気を紛らわそうと印を押した書類を放り、先程まで行っていたデスクワーク続行させる。
だが、ふと視線を下ろした書類の内容が先刻休憩がてらにコーヒーと溜息を嚥下していた頃と同じで、思わずもう一度溜息を付いた。
どうやらかなり自分は参っているらしい。
動かそうと握り締めた万年筆が全く動かない事を自覚して、広い机に転がしまた溜息を漏らした。
「……柄じゃねぇがな…」
「……」
「マジで心臓が止まるかと思った。というより、狐に包まれた気分だったな」
「…ボスがそう感じるのも無理ないわ。だって……」
口を開いたルッスーリアが直ぐ様閉口して押し黙る。
その様子に自嘲の笑みを浮かべて、暗に話を続けるよう伝えた。
その視線を受けて、ルッスーリアが渋々言葉を紡ぐ。
「だって、私達でも知らなかったんだもの。スクアーロに子供がいただなんて」
事の始まりは昨日の晩であった。
やっと以前の日常に戻ったヴァリアーが、落ち着きを取り戻し掛けた処。
その頃合を見計ったかの様に、スクアーロが他の幹部全員、及びボスである俺に召集を掛けたのは。
最初は誰もがボンゴレからの圧力をどうするかなど、他愛もない問題を切り出すのだとばかり思っていた。
レヴィに引き続き思慮深く几帳面なスクアーロならではのものだ、と。
手短にしろ、などと茶化す幹部達に浴びせられたのは、今までに指を折るまでもない程真摯な表情をしたスクアーロの告白の言葉で。
「今日呼び集めたのは、他でもねぇ。皆にオレが、今まで隠してきた事を知って貰う為に呼んだ」
辺りの空気が一気に下がるのが分かった。
スクアーロのその言葉の後が、ざわめきではなく水を打った様な静けさだった事も、まだ覚えている。
その時の俺は、スクアーロの次の言葉に酷く不安と焦燥を感じていた。
ある筈もない超直感でも働いていたのか、その予想は大きく的中したが。
あの時はまだ、その予感と言葉の意味をよく理解していなかったのだと思う。
「実はオレ……子供がいる」
俺とスクアーロとの子供だという事を。