復活連載

□17.邂逅
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イタリアの某所。
実の子が居るというその町は、思っていたよりも殺風景な場所だった。

緑、畑なとが広がる田舎町という訳ではなく、昔栄えたものが廃れてしまった様な印象だ。
家々はかなり密集しているが、活気溢れる雰囲気というものはあまり感じられない。
自身の子を隠す上では良い条件だろうと、ザンザスはスクアーロの先程の話を反芻しながら思った。


「前は結構観光地として人気もあったらしいぜぇ。今はもう住人くらいしか居ねぇけどなぁ」
「…此処に居るのか」


石畳の大通りを歩きながら、ザンザスがスクアーロに問い掛ける。


「あのテュールと、テメェと俺の子が」


スクアーロからテュールが生きていると露顕された時は驚いた。
あの慌ただしかった決闘の後の数日間に、ボンゴレ9代目は密かに彼を逃がしていたのだ。

スクアーロにとって彼がこうして第2の人生を歩んでいる事はとても好都合な事だろう。
子供をかくまう上でリスクは高いけれど、最も安全な場所なのだ。
だか危うい綱渡りだったにも違いない。
何時ボンゴレ上層部や他のマフィアの暗殺者などに見つかっていてもおかしくはなかったのだから。
それだけテュールが極秘人物だという事が再認識された。


人通りのある大通りを曲がると、徐々に音が遠のいていくのが分かった。
ヨーロッパではよく見られる、入り組んだ小路に入って行く。
狭い水路のある小道を左に曲がった処で、スクアーロは後ろを歩くザンザスに忠告した。


「この辺りの小道は初めて歩く奴には複雑な作りだからなぁ。オレにはぐれないようについて来てくれぇ」


前に進むスピードを依然として緩めずにスクアーロは言う。
確かに細かく曲がり角やらカーブがあれば道に迷いそうだ。
実際に、彼女の後を追うザンザスでさえも、いくつ曲がり角を曲がったのか思い出せなかった。

だが、それも幾分かした後に、スクアーロの歩幅のペースが上がる。
最初は警戒する程度だったザンザスも、それに気が付いてスピードを速めた。
素知らぬ顔で小道を進む中、スクアーロが小さくザンザスにだけ聞こえるように囁いた。


「───尾けられてるなぁ」
「ああ」
「数は3……4人ってとこかぁ」
「…撒けるか」
「当たり前だろぉ」


振り返ってニヤリと笑ったスクアーロ。
その頼もしさにザンザスも口端を持ち上げるだけの笑みを返した。

きっと2人の後を追ってきているのはこの辺りを縄張りにしているチンピラか何かなのだろう。
8年前からこの辺りを行き来しているスクアーロ曰く、稀にこうして金目の物を狙いに現れるらしい。
何とも上手く小路を利用した窃盗団だ。

だが暗殺業のプロを標的にしたのが運の尽きである。

フッとスクアーロが突然気配を消す。
それに合わせてザンザスも完全に気配を消すと彼女と共に走り出した。
慌てて後ろから追い掛けて来る気配。
だがそれを気にする余地もなく、度々右折左折で姿を消すスクアーロを追うのにザンザスも必死だった。

それに全く気が付かないスクアーロ。
何故ならザンザスが悟られないように焦りを露にしなかったからだ。
決して弱音など吐きはしないザンザスの性格と自尊心が彼を動かす。

そして、いくらか走った頃だった。


「…!」


長い一本道の先の十字の分岐点を、数人の子供達が走り横切って行く。
その十字路まで十数mに差し掛かった位置にいるスクアーロが小さく焦ったのが分かった。
未だ諦めず追い掛けて来る者達から、なるべく子供達を遠ざけてやらなければと彼女の走りに更に速さが加わる。
それを追いながら、ザンザスはスクアーロと十字路向かって駆けて行った。

子供達が過ぎ去って行った十字路を、スクアーロが何の躊躇もなく突っ切って行く。
それに続いたザンザスも、先程の子供達を見ていた為十字路は誰も通らないだろうと高を括っていた。

しかし、狭い十字の中心に立った瞬間、傍目に移った人影にギョッとする。
反射的に立ち止まってしまった途端に感じる衝撃に、ザンザスは瞬時に後悔を胸中に色濃く湛えた。

宙に舞いながら遠のく銀髪が、遠くの曲がり角を曲がった瞬間に、酷い脱力感さえも覚えた。






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