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□第七話・【EVOLUTION】
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「メタルキャノン!!」
ドルモンの口から巨大な金属球が吐き出され、レディーデビモンに直撃したかと思われた。
鈍い金属が砕け散る轟音が響いた。
「ぬるいな。」
砕け散った金属の破片を漆黒の両翼で防ぎ、傷一つ負っていないレディーデビモンが不適に笑っていた。
「成長期のデジモンが完全体の私に勝てるとでも思ったか。」
目を細め、右腕を天に伸ばした、どこからともなく現れた無数の蝙蝠達レディーデビモンの周囲に集まっていく。
「ユウ・・・このままじゃ・・・」
ドルモンが不安気に裕の顔を見上げた。
ドルモンの言いたいことはわかる。このままでは埒が明かない。
レディーデビモンが現れてから、裕とドルモンはひたすらに逃げながらも応戦を続けていた。
人通りの多い場所では犠牲になる人が出る。
人の少ない場所を探しながら、必死に逃げ、何とか相手にダメージを与えようとしていた。
しかし、レディーデビモンの言う通り、ドルモンはまだ成長期であり、
到底、完全体であるレディデビモンに対して勝機などないに等しかった。
デジヴァイスが手元にある今、何らかのきっかけがあれば
きっとドルモンだって進化できるはず。
完全体に、とまではいかなくても、せめて成熟期まで進化できることができれば。
何とか撒くことくらいはできないものか。
ここからもう少ししたところに学校がある。
そこの校庭なら広いし、こんな夜中ならきっと誰もいないはずだ。
そこで、何とかしてやる。
「あれ、ユウの学校!!」
ドルモンが走りながら、学校を指差した。
誰もいない夜の学校は、静寂に包まれながら裕とドルモンをその中に取り込んだ。
裕とドルモンは校門の柵を乗り越え、運動場を目指し走った。
「いい加減に諦めて欲しいものだな・・・。」
レディーデビモンが苦々しく呟き、ドルモンに向かって蝙蝠達を飛ばした。
初速は微々たるものだったが、少しずつスピードを上げていき、
黒い炎の蝙蝠達がドルモンの足を捕らえた。
ドルモンの右足に激痛が走る。
「うわあぁ!!」
「ドルモン!!」
校庭へと直接続く石段でドルモンがバランスを崩し、
それを受け止めようとした裕まで一緒になって石段から転げ落ちた。
ドルモンを抱きかかえるようにして庇ったため、裕は全身を強く打ちつけられてしまった。
校庭の砂が、裕の頬にひんやりした冷たい感触と、ざらりとした砂利の痛みを感じさせた。
口の中が切れたらしく、口内にじわりと鉄の味も広がった。