ひより3

□放課後スリル
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小野先生は優しくてかっこいいからみんな(主に女子)に人気があるってことはわかってた。


「小野先生さようならー!」
「さようなら」


通り過ぎる生徒(主に女子)が先生に挨拶をすると先生もそれに笑顔でかえす。それにきゃあきゃあと黄色い声をあげて喜ぶ生徒(主に女子)。私はそれを歩きながら横目でながす。そんなにきゃあきゃあ言わなくてもよくない?すると先生が前から歩いてきた。なんだかへんにどきどきする。…あれ。おもえば私もさっきの子達となんら変わりないなのかもしれない。うつむいていた顔をあげた。先生と目が、あう。


「さっ、さよなら」


先生は笑っただけで、それだけでなにも言わなかった。すっと私の横をすりぬける、先生。自然と足が歩くことをやめる。目を見開いた。振り向くと先生の姿が、見えなくて。


「っ…」


ふいにでてきそうになった涙をこらえて、止めていた足を今度は急かすように早く動かす。なんで、どうして、先生。みんなにはさようならっていってたのに。いらいらする。これがやきもちってやつなのかな。もやもやしていらいらして胸の真ん中がどろどろして気持ち悪い。嫌だ。こんな気持ち、嫌だ。消えろ消えろ消えろ。


「ー…ほら、」


目を見開いた。腕をひかれてふりむいた。どうして。心の底から求めていた人が、困ったように笑ってそこにいた。


「先、生」
「あ、泣きそうだし」


そんなに悲しかった?と先生の指先が目尻に触れた。その優しさにまた泣きそうになる。それをこらえて私は先生を小さく睨んだ。


「…わざと?」
「だったとしたら?」


ふいにその余裕の笑みをうかべる綺麗な顔を殴ってやりたくなった。わざとらしく大きなため息をはいてやる。こいつ、さっきの気持ち全部かえせ。


「泣きそう」
「ごめんごめん」


それでも、笑って私の頭を撫でる先生を見るとそんなことどうでもよくなってきて。それと同時に人間の感情ってこんなにも単純にできてるんだなと思ってしまった。





090503









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